*+ASTRAY+*

食べることとか大好き高校生のブログ。ツイッターのせいで変更滞り気味。SSあります。

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機動戦士ガンダムSEED palatine 13「魔王、出撃」

最近のなのはは少々元気がない。

いつも通り、訓練時は厳しく、通常時は明るくドジなのは変わりないが、どこか元気がないように見えるのは私だけなのだろうか。

八神はやてはルナマリア・ホークとジャクリーヌ・ヴィランを従え、そう考えながら廊下を進む。

向かう先は、食堂。

元さんのアップルパイを何としてでもゲットしなくては。

ライバルである藤原優香やフォルテ、メリッサ・マオは現在格納庫でルーチンワークをこなしているのが確認されている。

今のうちだ。

はやてはうっすらと口元に笑みをつくり、低く笑う。

「・・・ふっふっふ・・・これまでの食べ物の恨みを晴らしてやるで・・・」

まるで何処かのお化けのような雰囲気をぶんぶんと撒き散らしてはやては廊下を進む。

ルナマリアとジャクリーヌはそのお化けのような笑みにぞくりと寒気を感じたことを口に出さないよう細心の注意を払う。

ま、優香の霊獣に蹴散らされ、フォルテに木刀でぶん殴られ、マオには怒鳴られ、ほとんど毎日美味しいアップルパイを逃したのは事実だ、私も今日は存分に楽しむ事にしよう、とルナマリアは思った。

廊下が2つに分かれる。

3人は迷わず右へ進路を取った。

早足気味に、黙々と歩く。

はやては幽霊のような笑みを浮かべて、ルナマリアはあちこち睨んで、ジャクリーヌはすまし顔で、道を進む。

べちゃべちゃ喋りながら通路を歩いてきた善良隊員たちも、その3人の表情を見て、さっと敬礼して駆け足で去っていった。

そんな昼下がりの事だった。

いきなりマシンボイスが頭の中に”キィイイイン”と響いてきたのだ。

はやてたちは顔をしかめる。

何だろう?

ブレインチップの故障だろうか。


・・・ちょっとまて、故障?こしょう?こしょー?


それって、ブレインチップ壊れた=脳が壊れた、だから・・・。

はやてたちは真っ青になった。

「「「な、なにゅうううううっ!?」」」

テスタロッサ機関長直属秘書の、頼りになるジャクリーヌさえもが、金きり声をあげた。

*

ついにきてしまった。

ミスリルの白い悪魔こと高町なのは教導官は頭を抱えていた。

ついにきたYO。

きてほしくなかったのに。

「・・・ううぅ、どしよ・・・?」

オフィスの中の自分のブースに置かれているデスクに頬杖をついて、なのははひたすら後悔の念にとらわれ続けた。


ことの始まりは3週間前の某月某日のことだ。


「はい!それじゃ、お疲れさん!ちゃんとうがい手洗いはするんだよ~!」

いつも通りに訓練が終わった夕方。

外もすっかり暗くなっているのだろうな、となのはは思いつつ、愛娘ヴィヴィオのことを思い、心を躍らせる。

なのはにとってそれは、肌寒ささえ吹き飛ばす、大事な事だった。

教え子のミンクスやレイフが引き気味になのはの横を通り過ぎていく。

それさえ気に留めず、なのははるんるんるんるんとステップを踏みながら訓練場を後にした。

「なのはママ、お疲れ様っ♪」

廊下に出ると、求めに求め続けた愛娘ヴィヴィオの、笑顔。

なのはは自分の頬が相当緩んでいる事にも気付かず、「ありがと、ヴィヴィオっ♪」と返す。

今日は何故か戦争犬こと相良宗介の暴走がないなあ、と気付いたのは、ヴィヴィオが手をぎゅっと握ってくれた時。

「じゃ、元さんの美味しい美味しいご飯食べにいこっか!」

「うん、了解(ヤー)!」

2人はスキップしながら廊下を歩いた。

その姿は、親子というより姉妹といったほうがしっくりくる感じ。

三時台限定アップルパイを2人分テイクアウトできて、ヴィヴィオが笑ってくれた。

これ以上の幸せが、幸運があるだろうか!

なのはは1人、心の中で高笑いを続ける。

もし心が読めるヒトがいたならば、「なのはさん・・・おちついてください」などと声をかけていたことだろう。

そんな調子で食堂の前までやってきて、食堂に2人が入ろうとしたとき――



ドグウウウウアアアアアンンンンンッッ!!



とても巨大な、それは巨大な、振動と音が耳と身体の制御を奪っていた。

「・・・ソースケくん?」

「戦争馬鹿のヒトかな?」

相良宗介はすでにヴィヴィオにすっかり”戦争馬鹿”と認識されていたようである。

周りの隊員たちは、吹っ飛んで壁や床とキスをしていたり、机の角に頭を打って目を回している。

なのはとヴィヴィオは互いにしゃがんで片手を壁に、片手で2人は手をぎゅっと硬くつないでいた。

「まったく・・・・今度はどこ吹き飛ばしたの?
 ちょっとまってね、ヴィヴィオ♪」

「うんっ!」

網膜投影されるウィンドウの透明度を最小に抑えて、なのはは基地管制を勤める管理コンピュータ”マザー”にアクセスする。

ちなみにマザーとは通常時、音声通信で繋がっているが、訓練のためそれを切っていた。

・・・と、破損箇所履歴・破損箇所、と・・・。

すると、”検索中”のダイアログが表示され、数秒後、”ピッ”という電子音と共に、検索完了を知らせてきた。

えっと、最新破損箇所、っと・・・、クリック。

場所は、倉庫室らしい。

倉庫エリアの中のちいさな、部屋だ。

収まっているものは、使用済みのカートリッジだったり簡易デバイスだったり、段ボールだったりと、殆どがジャンク品だ。

しかし、施設を壊しているのは事実。

いつも通り、”宗介狩り”を決行しよう。

なのははふと溜息をついて、がっくりと肩を落とした。

「ごめんね、ヴィヴィオ。ちょっと戦争馬鹿のヒトに頭冷やしてもらってくるから、待ってて?すぐ終わるうから」

こくりと元気良く頷くヴィヴィオ。

なのははニコニコ笑いながら最大速度・全力全開で廊下を疾走した。



「な~のは♪」

「にゃあっ!?」

突然の声になのはの思考は停止、飛び退く。

前を見やると、アルテア・テスタロッサ大尉が元気っ子スマイルでブースを覗いていた。

なのはは慌てて飛び退いた勢いで、、椅子のバランスが崩れ、見事に床に尻餅をついた。

「ったぁぁ」

「だじょぶ?」

アルテアがひょっこりとブースの仕切りから顔だけを出して、首を傾げる。

やっぱり、フェイトちゃんそっくり。

ま、もともと”フェイトちゃんの”・・・。


キイイイイイイイイィイイイィイイィィン!


耳鳴り。

いや、私がディバインバスターですっ飛ばした、コンピュータから発せられている、異常音だ。

そう思うとなのはは再び頭を抱えたくなってしまった。

アルテアが顔をしかめて異常音を聞いているのが見て取れる。

「もしかして、ネットワーク管理の”ダーナ”でもすっ飛ばした?」

うお、鋭い。

なのははこねかみをひくひくと引きつらせて、ゆっくりと、身をお越しもしないでアルテアから距離をとる。

そうなのだ、私がうっかりすっ飛ばしてしまったのだ、精密機械”バルドルシステム”を。

機械的AI”バルドルシステム”の一種で、この基地でのネットワーク管理を行う”ダーナ”の一部を、私がぶっ飛ばしたんだ。

「あ~、えと・・・」

アルテアが溜息をついた。

「あのさ・・・さっきからチャントで聞こえてるんだけど。
 ついつい思考を回線に流してるみたいだね。マザーも苦笑してるよ?」

マザーと音声接続しているらしい、アルテアはにっこりと悪魔の笑みを浮かべた。

<高町なのは様、基地管制コンピュータ”マザー”より、視聴覚モードでの音声通信を我に接続せよとのお達しです>

なのはの頭の中にいつものマシンボイスが響いた。

それを聞いてなのはは顔を蒼くした。

マザーは普段、音声通信を閉じている者に、接続しなおせと要請してくる事はない。

つまり、何かあるということ。

一番ありえるのは、お説教。

マザーの怒りの声が、今にも聞こえてきそうだ。

<高町なのはさん、少しよろしいでしょうか>

「ええっ!?マザーッ!?」

接続許可を出していないのに、マザーとの通信が繋がった。

なのはは、ついうっかり大きく声を上げてしまった。

<オフィス内では静かにお願いします、パーソナルオフィスではありませんから>

もともと”星修学園”で教師として学園都市を統治していたマザーはさっさと警告を飛ばす。

・・・と?

”ワイヤード(直結通信)コネクト接続を確認、直結開始?

いきなりダイアログが表示されたと思えば、またも覚えのない警告。

『ふふ~ん、空きあり~♪』

振り向くといつの間にかやってきたアルテアが、なのはの首に刺さっているケーブルを掴み、自分の方にもケーブルを繋いでにこにこと微笑んでいた。

<高町なのはさん、今回はキラさん、雪風、アルテアさんの協力を得て、強制的に視聴覚モード音声通信回線を繋がせていただきました>

ご丁寧に説明をしてくれるマザー。

ブレインチップなどの操作がニガテななのはにとって、普段はありがたく思える解説だが、今回は地獄から響く声に思えた。

さらに、最小に抑えていたウィンドウ透明度が最大にされ、視界の中は殆どデジタル文字だけになってしまった。

『すみません、教導官殿』

雪風の凛とした声が響いてきた。

そして、1つのデータが送られてきた。

<お説教はあとでゆっくりとやらせていただきます、それより仕事が優先です。
 テスタロッサ機関長より、命令が下りました>

『それは、私たち調査組の支援。きえたシンの代わり。
 あと、隊長にアルテアが抜擢された、一緒に明日、いくよ』

あ~・・・えと・・・。

視線を適当に泳がせて、間をおくなのは。

その姿、母に怒られた子のようだった。



アイーダは1人空を眺めていた。

手にはデバイス”エグザエル”。

彼女が真っ直ぐ見据えている星は、きらきらと美しく輝く。

赤く染み出た血のような煙と、幻想的な夜景をゆっくりと眺める。

ここは、”フェアリィ”。

随分前に、消失したというわれる場所だ。

”アルハザード”と同じで、”存在”だけを消された世界。

管理局は、フェアリィは消失したと情報管制を敷いていたのだ。

しかし、機密といえど、もれないわけではない。

すでに分かっているんだ、今存在している”深井零”は、自分が相手にしている”ミスリル”の”深井零”は、偽者だ。

本物は、ここフェアリィの地中奥深くで眠りについている。

故に、管理局上層部からは、”深淵の騎士”と呼ばれている。

同じ古代ベルカ戦線に参加していた藤原優香も同様、普段眼にしているのは偽者。

いや、偽者というのはおかしいのかもしれない。

アイーダは無表情に静かな空を眺める。

我々が見ている深井零や藤原優香は、幻影だ。

いや、彼らの”意識”だ。

身体は眠っていても、意識”魂”は外で具現化し、活動している。

しかし肉体はそのことを知らないだろう。

動いていないのだから。

ここはロストロギアの墓場だ。

闇の書の残滓”闇の欠片”をはじめとしたものが、地中奥深くで眠っている。

もう活動する事のないロストロギアがここで”管理”という名目で捨てられているのだ。

それ故に、警備は殆どいない。

アイーダは視線をふと後ろに向けた。

「シンシア、どうでした?」

か弱い声。

しかし、芯はしっかりしているから、ちゃんとシンシアの耳に届く。

「大丈夫。警備いない。カメラとかはちゃんと小細工しておいた」

にかっと笑みを浮かべシンシアが答える。

今回は、深井零と藤原優香の”身体”を目覚めさせるため、ココに来ているのだ。

彼らの身に眠っているロストロギア、霊獣”ディアルガ”と、”パルキア”を、殺生石を、そして無限の魔力を生み出す”ヴァルナ”を目覚めさせるため。

「・・・いきましょう」

アイーダはつかつかと歩き出した。

フェアリィの幻想的な風景を見ることもなく。

シンシアは黙って後を追った。


彼女らの考えは甘かった。

あともう1ミリで、彼らの眠るポッドに触れるところで、邪魔が入ったのだ。

「我、イグナシスの騎士、インテグラ。これより無礼者を排除する・・・ッ!」

いきなり襲ってきた。

すれすれでアイーダはかわして、フォトンを形成、発射。

三角の、自分たちの同じ古代ベルカ式の魔方陣があたりに広がる。

「ツバメ――」

はっとふたりは息を飲んだ。

インテグラ――

いや、生きていたなんて・・・

「返し・・・・ッ!」

突風と爆音と共に、アイーダの放ったフォトンが帰ってくる。

「ッ!?」

シールドで受け止めるも、体制が崩れてすっ飛ばされる。

騎士インテグラ。

聖王イグナシスの誇る7人の騎士のうち1人だ。

「インテグラ・グランガイツ・・・・生きていたのですか」

煙が晴れてきて、彼女のシルエットが見えてくる。

夜天の書の騎士カリーヌの姉であり、7大騎士の1人、インテグラが手にした2本の槍を振った。

「生きていて、何か不都合でもあるのか、我が妹」

アイーダはさっと蒼くなる。

思い出したくない過去が、沢山の虐殺の風景画フラッシュバックする。

騎士インテグラは、私の嫌いな姉。

だから、グランガイツ家門の武術を習いたくなかったのだ。

槍を使いたくないのだ。

嫌な姉、嫌いな姉、醜い武器、・・・

軽くカールした柔らかい金髪が青白い照明に照らされて、銀色に見えた。

「我が家門を汚し、挙句の果てに、聖王の宝に手を出すのか、愚か者」

もう一度強く左に持った槍を強く振るう。

つむじ風が舞い、うっすらとたまった埃を吹き飛ばす。

「グランガイツの家門を、汚したのは事実。だけど聖王の宝――「黙れ!」」

インテグラの強い剣幕にアイーダはひるむ。

ゆっくりとインテグラがアイーダに向かって歩いていく。

「我が聖王イグナシスから受けた最後の命・・・それは、我らの英雄を永遠に守り続ける事なのだ」

鋭くアイーダを射抜く青の瞳。

「聖王イグナシスが、守りたい、守ってやると誓った二人の英雄とそのデバイスを、我はここで永遠に守り続けるのだ。
 目的のためならば、たとえ妹といえど、容赦はせんぞ?」

ぎらりと輝く槍先。

最高の獲物を目にした狩人のように、冷酷にアイーダたちを見つめた。

「我と戦いたくないのなら、ココを退け。わかったか」

「・・・いやです、これも・・・仲間の、ためですから・・・」

「そうか、なら、言葉は要らないな・・・全力でかかって来い、”フィーリス”ッ!」


ガチャリ


重たい音を響かせながらインテグラは構えた。



「いいですか、絶対に、施設を破壊してはいけませんよ」

テッサが怒鳴った。

ううっ、となのはは身体を縮める。

怒りをあらわにして、テッサは深く溜息をついた。

「ここはまだしも、調査対象の施設で砲撃は絶対、ダメですよ、わかりましたか」

「ううぅ・・・・」

「唸ってないで返事なさい!」

「にゃあ!?」

テッサは眉をひくひくと小刻みに動かして、なのはを見やる。

なのはは元々細い身体をさらに縮めて唸る。

ちなみにこの場にはテッサとなのは以外には、雪風、白嵐、優香、そして例のコピー騎士がそこにいる。

『ご苦労さん、なのは。
 ダーナの復旧はもう少しかかるってさ~♪』

優香がにこにこと悪魔スマイルを振りまきながらチャントで労いの言葉を言ってくる。

『そうね、高町大尉、ご苦労様』

コピー騎士改めツェスも、にこっと笑みを浮かべて同意してくる。

雪風、白嵐の二人は、苦笑していた。



「・・・つまり、異世界人であると?」

「ああ」

ブリタリア基地の隊長室で、シンは肯定した。

目の前のミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐は沈黙した。

細い指を絡めて、何かを考えているようだ。

傍らに控える坂本美緒は無表情にシンを見ている。

まぁ、おれもキラさんから次元世界や管理局のことを教えてもらったときは正直信じられなかったしな。

シンはそう思いながら今後のことを考える。

念話とチャントは繋がらなかった。

メールや暗号通信等も試してみたが、ミスリルも特殊戦やザフトとも連絡が取れなかった。

つまり、未確認世界。

メイヴやスーパーシルフが近くの世界で稼動している事を切に願いつつ、とりあえず衣食住を確保するためこうして機密に関わらない程度の事情を説明して交渉している真っ最中だ。

「・・・正直、信じられないけど、私たちにも”ネウロイ”という前例があるから・・・どうしようかしら」

ミーナ中佐が凛々しく引き締まった顎に手を沿えて、考える仕草を取る。

ミスリルの隊員でたとえたら、その姿はテッサやはやて、優香たち特殊戦のメンバーに似ているところがある。

特殊戦に関して言えば、”興味があるもの”に限るが。

「う~ん・・・じゃあ、1つ条件」

ぴんと指を立てて、ミーナ中佐が言い放った。

シンは我に返って中佐を見やる。

「条件・・・?」

「ええ」

微笑を浮かべ、中佐は頷いた。

シンはさっと思考をめぐらせる。

とりあえず、自分の目的は衣食住の確保だ。

場所が悪くても構わないと中佐には言ってある。

・・・とりあえず、民間人とは認識されていないっぽい。

恐らくウィッチとか言う航空歩兵と編隊組んでネウロイとか言う敵を狩れ、とでもいうのだろう。

先の戦闘でざっと敵の弱点はわかった。

ハリネズミであることを除いては、1人でも充分だろう。

「・・・おれに、戦闘に参加せよ、と」

「あら、察しがいいのね」

くすりと笑みをつくり中佐がいい、隣の坂本少佐は横目にシンを見ていた。

「ミーナの笑みの意味は、察しがつきやすいからな」

「そうかしら、美緒?」

坂本少佐は溜息をつき、肩を落とした。

たしかに、分かりやすい笑みであった。

正直高町教導官の”少し・・・頭、冷やそうか・・・”と同じように。

「別におれもエデンも大体そうだろうとは前から思ってましたし、一緒に戦った時点で、民間人であっても協力を求められるだろうとは思ってましたから」

シンは溜息混じりに言った。

するとミーナ中佐の笑みの質が変わった。

何かの前兆を思わせる悪魔の笑みから、美しく上品な笑みになった。

この笑みはたとえるとほっとした時のレイフたちの笑みかな、とシンは思う。

どっしりと静かな空気が漂う。

そんな中に1つの爆音が響いた。



「メンバーが変わった?」

フラッグ情報管理係第一小隊の作戦室。

声を上げたのは何時もの如く、カイラ・キルステンだ。

「ああ。隊長格がアスカ少佐から、アルテア・テスタロッサ大尉になったそうだ。
 それからもう1人追加で高町なのは少尉・・・だ、そうだ」

「うわ、男って深井大尉1人だけか」

「新しい指揮官さんと深井さんって、同じ階級なんですね」

洋介が驚き、みのりがメガネをかけなおしながら感心している。

綾音はいつもの通り、そんな会話に混じる気にもないらしく、壁に背を預けて書類に目を通している。

第一小隊隊長の八木澤宗次は腕を組んでばらまいた出向組みの資料を眺めていた。

相馬透はというと少々不安を感じていた。

シン・アスカと、八木澤隊長の指示があったからこそ、今までリラックスして、ステッペンウルフのことを忘れて任務に集中できたが、それはどこか安心感があったからだと思う。

シンの声と同じように、アルテア・テスタロッサという少女にも安心感を覚えられるだろうか。

そして、新たに背を任せる事になる仲間、高町なのはのこと。

どのような機体を使うのだろうか。

”ミスリル”には特に隊規定の機体が存在しないらしく、皆――少なくともシンや零たちのことだが――はそれぞれハンドメイトと思われる機体を使用していた。

彼女はどのような機体なのだろう。

透は不安をかき消すように天井を仰いだ。



「で、大丈夫なの?零」

「問題ない、大丈夫だ」

久しぶりに排ガス臭い空気を吸いながら零が優香に言葉を返す。

「しかしまぁ・・・融合騎主体の、まぁ・・・ブースを使ったとはいえ、あれやったら普通にきついわよね」

優香が肩をすくめる。

つい半日前にあった任務で零は専用コンソール”ブース”を使用し、融合騎”雪風”主体のユニゾンを行ったのだ。

その代償が、零の頭に巻かれた包帯と下着の下に張られた湿布である。

ちなみに優香も経験者であったりする。

”経験者は語る”のであった。

排ガス臭い空気を吸いつつ、フラッグの隊舎へ向かう。

空は前と変わらず、光を通すことのない灰色。

周りを行き交う人々はそんな温暖化風景をとくに気にした様子もなく歩き去っていく。

「ふぅ、この世界の空気はエアフィルター越しが一番か・・・」

大きな隊舎の中に入り、アルテアが大きく溜息をつきながら呟いた。

隊舎のロビーは簡素ながらも整備はしっかりされていて清潔だ。

「そうみたいだね・・・吐き気してきたよ」

なのはもアルテアと同じく溜息。

零はそんな2人を冷ややかに見やりつつ、階段から駆け下りてくる人影に目を留めた。

しかしすぐに興味がなくなったらしく目をふいと逸らし、宙に視線を固定した。

「まぁ、どこもミッドや天堂宮ほどきれいじゃないってことね」

優香が先ほど零が目に留めた人影を見つけ、軽く手を振りながら言う。

「だれかきたの?」

「・・・うん、私たちが所属する第一小隊の、瀬川みのり」

なのはの問いに白嵐が答える。

「へえ」

なのははじとっと、駆け寄ってくるみのりに目を向ける。

腰まで届く長い黒髪を流して、幼さは残るものの頼れそうな顔。

そして――なのはは胸を眺めた。

巨乳。

シグナム以上か、それ以下か。

私には分からないけど・・・ものすごく、大きい。

はやてちゃんがここにいたら真っ先に揉みに行っていたことだろう、なのはの頬が緩む。

「はぁはぁ・・・お久しぶり、です。優香さん」

「うん、おひさし。
 大丈夫?コレくらいで息きれてて」

「はい、大丈夫です・・・」

そう答えるみのりは息を弾ませていて、説得力の欠片もない。

にゃはは・・・まぁ、私もヒトの事言えないか。

なのはは苦笑する。

「えっと、深井さんも、お久しぶりです。
 ・・・シロちゃん、雪ちゃん、元気だった?」

「「うん」」

頷く零に元気良く頷く白嵐と雪風。

みのりはちびっ子二人の頭を撫でて、新規参戦のアルテアとなのはを見やった。

「あっと・・・はじめまして、アルテア・テスタロッサ大尉です」

慌ててアルテアが敬礼。

顔が赤い、フェイトちゃんみたい。

なのはは自分の世界に入ろうとする。

「じゃあ・・・貴方が高町少尉ですか?」

「えっ!?・・・ああ、はい」

なのはは慌てて我に返って敬礼。

うわ、美人だ・・・。

レインさんより美人だ、きっと。

そう考える自分に気付いてなのはは顔を赤くした。

「まぁ、ここで立ち話も他の方に迷惑ですし、他の小隊員たちと顔合わせしておかないといけませんから、作戦室までいきませうか?」

「そうね。・・・いこうか」

優香が笑みをこぼしながら言った。

するとみのりは零の頭に巻かれた包帯をちらりと見やるが、さっと身を翻して歩き出してしまった。

なのははアルテアと顔を見合わせ、歩き出した優香たちのあとをわたわたと追った。

狭い通路を抜け、階段を上がり、IDカードを提示して――って、これはどこの特殊戦基地だ?

何、メイヴやスーパーシルフみたいに箱入りなの?私たちって。

通路はどこも似たり寄ったりの風景で、ずっと同じ場所を歩いているように思えるが、各ブロックの名がつづられたプレートを見て、ここはさっきとは違うのだとなのはは気付く。

毎日毎日こういう通勤を続けていた零や優香といった特殊戦組に同情して、フェアリィ基地ってもっとすごかったのだろうなとも思い直す。

フェアリィ基地は地下深くに作られた基地だ。

規模が非常に大きかった基地で、多分管理局の地上本部にも引けを取らない。

もしかしたら、地上本部より大きいのかも。

まぁ、そういう巨大な基地で、そこに所属する者たちの生活する空間は1つの小都市として機能していたらしい。

更に言うと、その都市から戦隊区まで移動する経路は立体迷路だったらしい。

実際に迷子になったヒトもいるらしい(優香が昔組んでいたフライトオフィサがその1人)。

1つの扉をくぐる。

「よっ、久しぶりだなぁ」

まぁ、なんとも呑気な雰囲気のおじさんが現れた。

「お久しぶりです、八木澤隊長」

優香が営業スマイルで答える。

え、このヒト、隊長?

なのはとアルテアは部屋の中を見渡した。

確かに、年配で隊長格でありそうなのは、この人物だ。

「大丈夫か?深井大尉」

ちゃらけていそうな人物が笑みを浮かべながら聞いてくる。

「問題ない」

零はその一言で、柏木洋介との会話を終わらせた。

洋介はつまらなそうな顔をしてさっと視線をなのはとアルテアにむけた。

ふと嫌な予感がして、なのはは少々黒い笑みを浮かべてしまうと、洋介は身震いして後ずさる。

え?私ってそんなに怖いのだろうか。

なのはが視線を泳がせると、アルテアが肩をすくめて見せた。

「えっと、本日着任したアルテア・テスタロッサ大尉と高町なのは少尉です」

雪風が顔を引き締めてなのはとアルテアを指差し、隊長に言う。

すると、八木澤隊長は満足気に頷いて見せた。

「アルテア・テスタロッサ大尉であります」

ぴしっとアルテアは敬礼を決めて、改めて隊の人間を見やった。

「高町なのは少尉です、そのできたら、訓練を――「だめ」」

なのはの願いは言い終わる前に優香の一言であっさりと撃墜されてしまった。

なんで、私の訓練って、間違ってる?

なのはが首をかしげると零を除いたミスリル組が「ある意味で間違ってる」としっかり声を揃え言い放った。

「え~~、間違ってる~~!?」

「・・・魔王の訓練はもう、普通のヒトじゃこなせないよ」

雪風がこっそりと言うと、アルテアや白嵐がしっかり頷く。

「あの~、魔王って?」

洋介が声をかけるが、ミスリル組はそれを無視、がやがやと騒ぎ立てていた。

優香やアルテアの頭からは第一小隊の存在はすっかり消え去り、入り口で騒ぐ。


ウーーッ、ウーーッ


「にゃあっ!?」

いきなりの警報(ワーニング)。

なのはは飛び上がる。

アルテアや優香たちも騒ぐのを止め、八木澤隊長に向き直る。

「ポイント54にシュミクラムと思われるプログラムを確認、出撃命令が出ています」

みのりがコンソールをすばやく打って、報告。

アルテアは自身のデバイス”ハルバート”の格納領域からワイヤード(有線コネクタ)を取り出してログインしたい衝動をこらえつつ、八木澤隊長の指示を待った。



「くっ・・・ッ!」

オーブの何処かに位置する邸宅。

つい先ほどまでは闇に包まれた静かな、どっしりとした安心感と不安で覆われていたこの邸宅は今、戦場だった。

ミスリル作戦部・第2特殊戦闘機動航空歩兵小隊所属、ステラ・ルーシェ大尉は2対の短剣で、敵の攻撃を防ぎながら、カートリッジをロード。

「マルバス」

<ヤヴォール>

敵も同じようにカートリッジをロード。

「ウルフ」

<イエス・マイロード。
 ヴォルフシュテイン>

2対の短剣の柄の先に鎖が現れ、その鎖につながれた短剣が10個ほど現れる。

紫の魔方陣が強く輝いた。

<エア・ハンマー>

敵はつむじ風を巻き起こし、巨大な風のハンマーを作り上げ、構える。

「ヴォルフシュテインッ!」

「エア・・・ハンマアアアッ!」

巨大な風のハンマーと、さらに増えた短剣が衝突。

爆煙を巻き起こす。

ステラはさっと身を引く。

敵も同じように身を引いて、お互いの距離を離す。

もう何度目だろうか、こうして煙を巻き起こして距離をとったのは。

ステラの甲冑は防御力の低さもあり、所々裂けている。

それは敵も同じらしく、つまり戦闘スタイルの根源は同じという事だ。

装甲を軽くして得た、爆発的な加速力と機動性。

敵はスピードを駆使し、自身も”疾風”の変換素質を使ってさらに加速し、風を操り敵と交戦するスタイルだ。

ステラも持ち前の速さを利用するが、彼女の場合変換素質を使用せず、特殊カートリッジにより魔力を隠して接近、斬激というスタイルだ。

簡単に言えば、盗賊スタイル。

対する相手は”ミサイル”。

いや、ミサイルというのも何処かおかしいかもしれない。

弾丸となって迫り来るその敵は加速しながら別の攻撃をはなつのだから。

敵のデバイスはカートリッジ機構を持っているが、変形機構はないらしい。

その分、フレームの強度は高い。

シールドについては、能力が低い。

敵の、マルバスというデバイスは”槍”型で、動きはかのグランガイツの動きに通じるものがある、そうステラは考える。

しかし、あの弾丸だかミサイルだかクラスターだか分からない相手をどうやって倒そうか?

そう考えあぐねいたとき、一発の銃声が聞こえた。

そして立て続けに三発。

眠りについていた鳥や動物が一斉に目を覚まし、さあっと走って逃げていく。

『聞こえる?』

念話。

一瞬フェイトからだと思ったが、すぐに違うとわかった。

『これから支援するわ』

その瞬間、現れたのは、少女。

多分、私と同じくらい。

「MP-31、カートリッジロード」

<ヤー>

ガコン

正体不明の少女が手にしたデバイスが、狙撃銃から2丁の拳銃へと姿をかえた。

深井大尉の”ヴァルキュリア”に似ているな、などと思いつつ甲冑を再構成。

多分今のうちしかそんな事出来ないから。

月に照らされた栗色の髪が美しく輝いていた。



また、白い機体。

深井大尉の”メイヴアイン”のように、形状は違うが、狙撃砲を装備。

これが、高町少尉のシュミクラム”レイジング・ライト”であるらしい。

その隣には漆黒の機体。

テスタロッサ大尉の”ハルバート・スラッシュ”だ。

ハルバートは斧を装備し、藤原中尉の”メイヴセイバー”のように背中に2振りの剣。

近戦メインの機体であるらしい。

『それじゃ、編成はフロントアタッカーに透と私、センターガードが深井大尉となのはでガードウィングに優香、カイラ、洋介、フルバックに雪風と白嵐』

ちょっと待て、透は即座にそう思った。

フロントアタッカーとか一体何の事だろう。

『ポジションの事だよ。
 フロントアタッカーは前衛、最前線になるよ、センターガードは援護射撃をすばやく行っていくポジションで、ガードウィングはフロントアタッカーと連携しつつ、センターガードを守るのが役目』

雪風がすぐにそう解説してくれた。

「ああ、わかった」

返事をして、目の前を睨む。

『それじゃ、各機必ず帰還する事』

シンと同じ言葉を大尉が口にした。

『では、オープンコンバット!』

瞬間、ハルバートは消えていた。

優香が通信でカイラと洋介を自身の持ち場へ誘導していく。

高町少尉と深井大尉はさっと後方に下がる。

『ほら、なにぐつぐつしているのっ!相馬透!』

大尉が楽しそうに怒鳴ってきた。

それで我に返り、透は走り出した。

本日の敵は一般ハッカー。

フェタオではない。

金色の光を放つ斧をテスタロッサ大尉が振り回す。

『透、さっとやちゃって!・・・ああ、だけど”魔王”が多分親玉を撃つと思うからセンターガードに注意ね』

跳躍、回転しながら敵機を真っ二つ。

着地して横なぎに大尉は斧を振るう。

『ほら、何ぼさっとしてるの!』

今度は藤原中尉の声だ。

その警告で透は敵機に気付き、手持ちのハンドガンを発砲しながら後方へ飛ぶ。

敵の左腕を破壊。

しかし息をつく暇も無く再び敵機が散弾砲を放ちながら突っ込んでくる。

再びハンドガンを発砲。

敵機爆散。

『今撃つよ、アルテアちゃん、下がって!』

高町少尉の楽しそうな声。

『は~い!』

テスタロッサ大尉が元気良く返事を返し、透の手を引いて跳躍。

その時見えたのは、美しく、強く光る赤と桜色の光。

『バレル展開完了』

『うん』

深井大尉の冷静な声と、高町少尉の声が響く。

光が大きくなっていく。

足元の光と、銃口の先に広がるドーナツ型の光が、そしてドーナツ型の光――バレルの先に集まっていく光。


ガコン


2機の狙撃砲からそれぞれ1発筒薬莢が飛び出してくる。

両足に重心を乗せ、重たげに狙撃砲を構えなおし照準。


『ディバイン・バスターァァァ!』

『エクセリオン・バスター・M』


直後、機体が強く揺られた。

飛びかける意識を必死に保ちながら、飛び行く赤と桜色の閃光を眺めた。

美しく、力強く風を引き裂いて、敵のリーダーの前に張り巡らされた装甲版やトラップを一瞬にして破壊。

リーダー機もそれに巻き込まれて爆散した。

『さすが、ミスリルの白い悪魔に赤光(せっこう)の騎士ね』

優香の小ばかにしたような声が耳に響いた。



あとがき

最初の段階ではもっとかっこよく白い悪魔を目立たせようと思ったけど、忙しくてかなり脱線した

ほんとは今回、短編風にしようと思ったんだけど。

さてはて、何気にいろいろとまた謎が明かされましたね。

ちなみに深淵の騎士は零と優香以外にもいますからね。

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