*+ASTRAY+*

食べることとか大好き高校生のブログ。ツイッターのせいで変更滞り気味。SSあります。

Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

機動戦士ガンダムSEED palatine 過去外伝・ベルカ編 01 「異世界の未来から」

痛い。



身体が、焼けるように、痛い。



でも、何故、痛みなど感じるのだろう。



あの時、おれも雪風も彼女も、一瞬のうちに身体が焼けてしまったというのに。



痛みなど、感じる前に死に絶えているはずなのに。



水が飲みたい、喉が渇いた。



何故、喉が渇くのだ?



何故――





ゆっくりと、まぶたを持ち上げた。

光が目の中に入り、まぶしさのあまり彼は目を細める。

開け放たれた窓から、青い空が覗く。


青い空、か――


何時振りだろうか、青い空をこうしてのんびり観たのは。

首を回して身の回りを軽く見渡してみた。

ロッキングチェアが1脚と、彼が横たわっているベッドの横にちいさなキャビネットが置かれている。

反対側を観ると、彼女が眠っていた。

燦々と降り注ぐ太陽の光に照らされた黒髪がまぶしく輝く。

「目、覚めた?」

ふと声をかけられて、視線を戻すと、彼の顔をじっと覗き込む少女の姿。

金髪がこれまたまぶしく輝いている。

「・・・」

目を細めて少女の顔をまじまじと見つめる。

「まったく・・・助けてあげたのに、無愛想だなあ」

そういいながら少女はロッキングチェアにどっかと腰掛け、脚を組む。

苦笑しながら少女は、ベッドに横たわる深井零の視線を軽々と受けとめた。

「私はラーナ・フォン・ケフィラスよ、はじめまして。深井零さん?」

そう言ってラーナという少女は笑って見せた。

零はむっと彼女を睨む。

「何よ?貴方のデバイスが教えてくれた事よ?違うっての?」

ラーナは首をかしげ、肩をすくめる。

デバイスとは、何のことだろうか。

零は疑問を覚える

「・・・、雪風は?」

「・・・だからさあ、助けてあげたのに、挨拶もお礼も、自己紹介も無しなの?」

丸く大きな緑色の瞳が、零の真っ黒な瞳を映す。

窓から吹いてくる風がラーナの金髪をゆらゆらとゆっくりと揺らす。

「・・・・・・深井零」

ふっとラーナは吐息をついて、口を開いた零に微笑み、チェストの上を指差した。

「簡易デバイス。空間モニタを開いて、その雪風とやらの状況、調べれば?
 ユニゾンデバイスだから、ここには置いとけなかったのよ、ごめんね」

両手を合わせて誤るジェスチャーをして、少女はまたも笑う。

その笑顔が、何時の日か、幼き零を引き取った里親の1人の愛娘を思い浮かばせた。

何処に住んでいるか、名前も、性格も思い出せないのに、何故かその里親の愛娘の笑顔が思い浮かぶ。

零は溜息をついてから、身を起こす。

激痛が走るが無視してラーナの言う”簡易デバイス”に触れた。

すると、零の目の前に半透明のキーボードとモニタが出現した。

「っ!?」

零は目を疑った。

技術が進んでいる、FAFシステム軍団でもこのような技術はまだ開発されていなかったし、開発しているとも聞いていない。

「・・・もしかして、知らなかった?」

ラーナが笑いを抑えて聞いてきた。

「ここ、どこだかわかる?」

そうだ、ここはどこだ?

何故、おれは、彼女は、雪風は、白嵐は生きているのだろう。

核爆発に飲み込まれ、生きていても、もうまともに動かない身体になっていたはずなのに。

何故、身体が、悲鳴を上げながらも動いたのだろう。

「・・・、んん・・・、朝ぁ・・・?」

寝ぼけた声が聞こえた。

必死になって身体を後ろに向けると、彼女が――藤原優香がまぶたを持ち上げて、ぼけえっと寝ぼけ面を見せていた。

「んん・・・だれぇ?・・・、かーてんあけたの・・・」

非常に喋り方がゆっくりしている。

ラーナが立ち上がって、ブーツの音を響かせながら優香のベッドの隣へと向かう。

それを寝ぼけながらも怪訝そうに見つめる優香。

「目が覚めたみたいね、藤原優香さん」

微笑を浮かべ、ラーナが口を開く。

「んんん・・・だれぇ?・・・あ、れい・・・おはよぉ・・・・」

零は目を細めてソレに答える。

「ラーナよ、よろしくね」

「らあな?」

上から水でもかけてやろうか、などと零は考えつつ、溜息をついた。

寝起きがいいのか悪いのか、そろそろはっきりしろ。

普段は朝っぱらから布団ひっぺがえしてくれたくせに、まったく・・・。

おれの貴重な睡眠時間を返せ、ジャックの遊びに付き合ってるお陰で数時間しか寝られないんだぞ。

ふとそう心の中で愚痴ってる自分に気付いて、零はまた溜息をつく。

表示させたままの空間モニタに目を向けて、キーを叩いてみる。

並べたウィンドウに沢山の情報を表示させ、状況をざっと確認する。


ここはベルカという世界で、この町は千人隊長、つまり大隊の隊長、グランガイツ家の領地である。

ベルカはミッドチルダという世界と現在戦争を行っている真っ最中であるらしい。

攻撃手段は機械と”魔法”の融合系で、周りをざっと見ただけだと・・・風景は中世ヨーロッパだ。

技術レベルは既に中世ヨーロッパを超えているが。


「・・・で、ここどこ?」


小一時間、ようやく覚醒した優香はベッドに腰掛けながら言った。

毎回思うが、お前の治癒能力はどれだけ高いんだ。

おれはいまだに身を起こすくらいしかできないでいるのにいるのに。

「ん?体質上仕方ないのよ」

豊かなふくらみを揺らして、細く美しく、力強い脚を組んだ。

「体質?う~ん、気になるとこだけど、あんた達絶対ベルカ民じゃないわよね?」

ラーナがロッキングチェアを揺らしながら言う。

揺れるたびに、ロッキングチェアはギコギコとみっともない悲鳴を立てる。

「ミッド民でもなさそうだし・・・次元漂流者?」

「ミッド?ベルカ?何それ?」

優香が眉にしわを寄せて、聞き返す。

零は先ほどラーナから受け取った簡易デバイスを操作して、ウィンドウを優香に向けた。

それを見た優香はさらに眉のしわを濃く寄せた。

彼女のその表情は、雪風とフリップナイトが演習を行うとブッカー少佐が溜息混じりに言った時のようだ。

その時も、「はあっ!?」と声を荒げながら眉を濃く寄せていた。

「えっと、今零が開いているページに書いてあるとおり。
 ここは、ベルカっていう1つの世界なの。”聖王”を中心に、7つの大隊があって、そこからさらに細かく中隊や小隊が編成されているの。
 なぜかといえば、”ミッドチルダ”っていう世界と対立していて、戦争をしているから」

ラーナは立ち上がり、零が操作する簡易デバイスに触れ、新たにキーボードを出させる。

そして、ゆっくりと感覚を楽しむようにキーをタッチ。

「現在の聖王はイグナシスって言うの。
 そしてそれを囲んで、ここグランガイツ領地、アントーク領地、アルモニス領地、ヴァリエール領地、バニングス領地、マンデー領地、バートン領地があるの・・・こんな感じに」

零と優香は黙ってそのウィンドウを覗き込んだ。

真ん中の巨大な円形は”聖王”、今のイグナシス・ステイデーの領地をあらわされている。

それを囲むように、多少距離をとって、グランガイツをはじめとした広々とした領地をあらわす円が表示されている。

隙間にも、ちいさな円が点在している。

これも、領地であったり、自治都市の支配地域であるとラーナは言った。

「それで、ミッドチルダは最近あちらこちらの”次元世界”に勢力を伸ばしているの、それを取り仕切っているのは、おもに”ガルム・テスタロッサ”と、”高町恭也”よ」

画面が切り替わる。

表示されているのは、ミッドチルダの世界の地図。

「見ての通り、ベルカのように領土というものはない。国はあるけどね」

ラーナは滑らかにキーの上で指を躍らせる。

「何でミッドチルダとベルカが戦争を?
 ミッドチルダ側が無条件で我に帰順せよとでも言った?」

優香が首をかしげてラーナに問いかける。

ラーナはこくりと頷く。

「そう、その通り。当時の王・・・ハインツはその言葉にカチンと来たらしくてね、それでこの戦争よ。
 ちなみにこれは今から70年くらい前の話になるかな」

たしかに、無条件で政権を渡せといわれたら上に立つものはだれだって怒るさ。

零は鼻で笑った。

所詮、人間は何処でも同じだ。

土地や金を求めて同胞と戦う。

まったく意味のない戦いを繰り返す。

そして何時しか戦いの意味を忘れ、勢力が新たに分かれて、それを繰り返す。

零が鼻で笑った意味を察したらしい優香とラーナは、軽く頷いて見せた。

「それで、そのさっきから貴方が操作してる奴は、何?ODD(第三次元ディスプレイ)とはまた違うみたいだけど」

「空間モニタのこと?・・・ああ、これは、デバイスよ。
 今私が使っているのは簡易版だけど」

「簡易版?」

「そそ、”魔法”を行使する能力が殆ど無いの。
 これは確か、シールドを一回だけ発生させる奴だったかな、後は見て通り、情報端末。
 使った後また魔力込めなおさないといけないから、案外持っているヒトが少ないかな」

優香はしげしげと空間モニタを見つめた。

「とりあえず、どういうものかはわかったんだけど・・・魔法って何?」

「そーいうとおもった」

ラーナが笑いながらキーから指を離した。

そして――

『聞こえるかな?二人とも』

ラーナの声が聞こえた。

彼女の口は動いてはいないのに。

優香が目をぱちくりとさせる。

零は驚いた表情を見せてはいるものの、さほど興味もなさそうだ。

まぁ、ジャムの声を聞いた時もそんなんだったらしいから、驚かないのは当然か――優香は瞬きを繰り返しながら思う。

『えっと・・・?口、動いてないよね・・・?』

『おおっ、できてるよ』

思考がもれてる?

優香は冷静に考えた。

どこかで、見たことがある。

これが、魔法だというのなら、どこかで・・・

・・・嫌だ、思い出したくない。

恐い、怖い思いでは、もう沢山だ。

優香はかぶりを振って、思考を中断。

『これはね、念話といって――』

ラーナが解説を始める。

優香は殆ど耳を貸していなかった。


――これは思念通話、”念話”と言うものです。

――古代ベルカSSSの力はそれだけではないでしょう?

――さあ、この”ヒュードラ”に魔力を――。


沢山の嫌な思い出。

正直言って、戦士時代より嫌な思い出だ。

下っ端は皆、上の者や、英雄にあこがれる。

だけど、憧れの対象になっている者に、よい事はないのだ・・・。


ラーナの足元に緑色の三角形が描かれる。

「さてと、ここからは普通に喋るね。
 ・・・これは魔方陣だよ、魔方陣は空気中にある”魔力素”を、大量に取り込んで術者の”リンカー・コア”に送ったり、その逆・・・つまり魔力の排出を行ったりするんだ。足場として使用する時もあるよ」

ラーナはゆっくりと説明している。

優香は無意識のうちに、足元に魔方陣を展開させていた。

薄い、白っぽい青の魔方陣で、三角形。

「うわ・・・すごい」

ラーナは感心しきったらしく、口をあんぐりとあけていた。

零は彼女の異変をすぐさま感じ取った。

伊達に数年付き合っていたわけではない。

零は悲鳴を上げる身体を無理矢理ベッドから引き離し、よたよたと優香のベッドに移動。

彼女の身体をゆする。

焦点の合わない目。

それを見たラーナも純情でない事を悟り、部屋から走って出て行こうとする。

「優香っ!」

「・・・怖い、怖いよ・・・」

焦点の合わない黒い瞳から、一筋の液体が流れた。

零は彼女をゆする手を思わず緩めて、彼女の顔を見据えた。

「怖いよ・・・助けて・・・」

彼女の口から発せられた、蚊の鳴くような、弱弱しい声。

優香の身体が小刻みに震える。

「・・・大丈夫だ、心配するな」

以前雪風に言ったように、ゆっくりと、零は言った。

「れ、い・・・?」

頷いてやると、たちまち彼女の瞳に光が戻った。

消えてしまいそうな、かすれた声を上げながら、優香は零の胸に飛び込んだ。

「っ!?」

「・・・零、・・・私と一緒に、地獄まで一緒に来てくれる?」

しばしの沈黙の後、唐突に、優香がそう口にする。

零は優香の黒髪を撫でてやりながら、彼女の瞳を真っ直ぐ受け止めた。

ラーナは黙ってその光景を見守った。



「ナインブレイカーさん、お久しぶりです」

「ああ」

とある日の昼下がり。

ラーナは騎士姿で、淡々とそれを口にした。

目の前の男は低い声を発し、それに答える。

「しかし、珍しいですわね、殿方がここに来るなんて」

「そうか、珍しくあるまい。・・・フェルトは元気か」

「ええ、元気ですわ」

先ほど見せた明るい性格などまったく、その姿からは見ることが出来なかった。

その瞳は鋭利な、刃物のような光を持ち、纏った甲冑は鈍く輝く。

「うむ」

目の前の男、ナインブレイカーは口を閉じる。

グランガイツの副官を代々務める家系に生まれた彼は、非常に口数が少なく、つかみ所がない男だった。

また、非常に頭が切れる。

それ故に、実際のグランガイツ領は彼が統治していると言われている。

同じ副官家、ケフィラスに生まれたラーナは、実質的な領地警備隊長と呼ばれる。

「それで、何か御用が?・・・まぁ、厄介ごとをお抱えになっているのだと思いますが」

目を細めてラーナは言う。

するとナインブレイカーは軽く鼻で笑った。

「笑う必要がおありで?」

「いや、失礼した。貴殿の相変わらず高い洞察力に感嘆しただけだ」

さほど面白くなさそうに彼が口を開くと、風が強く吹いた。

ラーナの金髪が風に揺られた。

「そうですか、・・・ご用件をお聞きしましょうか。
 ・・・今、客人がいるので出来れば簡潔にお願いしたいものですが、多分そうは行かない事なのでしょう」

「ああ、その通りだ。・・・少々長い話になるだろう。ココでは難だ、お茶を出してはもらえないだろうか」

「わかりました」

ラーナは副官を務める騎士を呼んで、テーブルとお茶を用意するように指示を出す。

すると副官はさっと礼をして踵を返していった。

副官の背中を見送って、目をナインブレイカーに戻す。

彼は黙ってその目線を受け止めた。

「・・・それで、なんのことを相談しに来たのです?」

「聖王家に伝わる8宝具、その1つが昨日暴走した」

聖王8宝具。

それは代々聖王家が守ってきた伝説の代物だ。

使用されたのは遥か昔、現在はまったく使われていない。

厳重に封印処理を施し、聖王家の奥深くに眠っていたそれが暴走したらしい。

「なんと・・・。いったい、どういう類の暴走で?一体何が暴走を?」

「次元震だよ、そして暴走したのは”無限回廊(エターナルアイドル)”」

無限回廊、文字通り無限の回廊を作り出すことができる代物だ。

現在では2つに分割されており、次元転移能力を有する片割れはアリア――藤原優香中尉の手に、世界内転移能力を持つ片方はゼロ、深井零大尉の手にある。

ただ、その件については後々の事なので、話は割合する。

「次元震、ですか・・・被害は?」

「今のところは、3つの世界が消滅したとしか報告は入っていない」

ナインブレイカーの声を聞いて僅かに眉を顰めるラーナ。

彼はそれに気付いたが、あえてそこは無視した。

ラーナもそんな彼の態度に感謝しながら、熱くなり始めた頭を冷やす。

たしかに、SSS級ロストロギアの暴走で世界3つとは、安い代償だ。

運がよければミッドチルダも壊滅していただろうが、神は流石にそこまでは味方してくれず、生き残っている。

ただ、ベルカが無事ならばそれでよいのだ、とラーナは1人で自分を納得させるべく考えた。

「その事件と、先ほど出したラミアの予測が関係していると、私は考えている」

ナインブレイカーの低い声がケフィラス邸の中庭に響く。

代々聖王と常に行動を共にし、影から支えるいわば”影の聖王”。それが、グラシア家。

ラミアは現在のグラシア家当主だ。

未来予知能力を有しており、戦闘はともかくこうした政治的な話等でも非常に重要視される人物だ。

「彼女が、どのような予測を・・・?」

「うむ、・・・遥か遠い次元より、救世主が現る。そいつがベルカとミッドチルダの戦争はともかく、ベルカでおきている数々の物事を終わらせるだろう・・・という内容だった」

腕組みしながら彼は言う。

ラーナは彼が葉巻を取り出す様を見ながら、ラミアの予測について考えた。

遥か遠い次元より、救世主が現る――それはきっと、次元漂流者のことだろう。

そいつがベルカとミッドチルダの戦争やその他問題を終わらせる――次元漂流者が、世界を救う。

なんとなく納得できない、なぜ、このベルカを救うのは私たち騎士でも聖王でも、民ではないのだろう。

予測の内容についての自身の解釈が、ラーナにとって腹立たしかった。

次元漂流者・・・ちょっとまて。

ふと、まったく唐突に思い浮かんだ。

いまこの邸宅の中にいる、あの二人がそうなのだろうか、と。

デバイスはともかく、ユニゾンデバイスまで持っていたし・・・と、ラーナはお茶のしたくが出来たと報告してくる騎士に気付かず考え続けていると、ナインブレイカーが指でそれを教えた。

慌てて振り返ると、腕が騎士の首筋に当たってしまった。

すると騎士はどさっとタイルの上に倒れ。昏倒した。

「あーっと・・・やっちゃたよ・・・」

ラーナは苦笑いを浮かべて騎士の介抱にかかると、ナインブレイカーは何故か口元に笑みを浮かべた。

彼が笑う事はめったになかった。



「来たか、カーマイン」

聖王領地内のとある教会。

古い調度類が程よい具合に置かれ、長椅子が並ぶ。

彼女たちの前には大きな十字架と、太陽を模ったステンドグラス。

長身の女性は恭しく、自身の名を呼んだものに礼をした。

銀の髪がステンドグラスの光を受けても尚、銀色の輝きを放った。

「はい、シャクシャイン様」

頭を上げる事もなく、カーマインは返事を返す。

「カーマイン」

「は」

名を呼んだ目の前の、燃え盛るような朱色の髪を持つ女性に返事を返した。

すると、目の前の少女はこつこつと靴音を鳴らして近づいてきた。

その行動を盗み見ることは出来たが、十字架の影と周りの薄暗さが相まって、表情を見ることが出来なかった。

「救世主となる者が、現れました。
 我々”太陽の教会(イグレシア)”は、全力を持って彼らを支援します。始祖ブリミルの遺志の為に」

シャクシャインの靴音が止まる。

「顔を上げて、シャクシャイン」

「は」

顔を上げると、美しい茜色の瞳と朱色の髪がまぶしく思えた。

思わず目を細めるが、相手はむっと眉を顰める。

きっと、いぶかしんでいる様な表情に見えたのだろう。

「ついてはこれより、ケフィラス邸まで向かって欲しい」

「は」

すると、シャクシャインは拍子抜けだというように肩を少しすくめた。

「・・・何か?」

「いや・・・・聞かないのか、と思ってな」

どこか残念そうにシャクシャインはカーマインを見つめた。

カーマインは眉を顰めると、彼女は表情を戻した。

「状況を・・・ですか」

そう問うと彼女は頷いた。

そして、全く唐突に彼女が言った。

「やっぱり・・・変わりないんだな、貴方様は。
 私や敵や世界は、どんどん変わり行くのに。今の貴方様は、何で変わらないのだ。私も貴方様のように、何も変えたくもないのだ。何故、貴方様は変らない・・・・?」

「シャクシャイン様・・・私は――」

私だって変わったのだ。

そう、貴方と出会ってから――

私は、自分という人格が、人間味あふれるものに、変わっていった。

あなたと出会って、私は、初めて人間であることを理解できたのだ、だから忠誠を誓ったのだ。

しかし、それを口に出すことは出来なかった。

何故だか、いえなかった。

「司教様、いらっしゃいましたか」

不意に扉が開いて、上品な柔らか味のある声が教会内に響いた。

現れたのは、長い銀髪を流して、上品な笑みを浮かべるラミアの姿だった。

「グラシア様、何か?」

無表情にシャクシャインが問う。

その声を聞きながらカーマインは入り口へ向き直った。

「私が出した予測、すでに聞き及んでいますか?」

上品な笑みを消す事もなくラミアが口を開く。

シャクシャインはそれに頷く。

「それで、その予測の人物――つまりは次元漂流者のことで、言っておきたい事があります。
 ちなみにコレはまだ聖王には言っておりません」

涼しげな表情でラミアが言った。

するとシャクシャインは「なぜ私たちより先に、聖王陛下に申し上げないのだ」と問う。

「先に陛下へ申し上げれば、ミッドチルダとの戦闘に亀裂が発生しかねないからです」

「亀裂、だと?」

「はい。先に申し上げれば政治を牛耳る彼にも伝わってしまうでしょう。
 すると彼はさっさと素人同然の”救世主”と思われる次元漂流者を戦場に放り投げます。
 悪くて戦死、良くても戦力を知らしめてしまったり、怪我ですよ」

カーマインの質問に答えるラミアはいまだに涼しげな表情だ。

一方のカーマインはその答えを聞いて驚きを見せた。

「テスタロッサと”不破”に伝わり、彼らはそれに対抗すべく新たな兵器を投入する、と」

それに頷くラミア。

シャクシャインは顎に手を当てて一人思考にふけっていた。

薄暗い教会内を照らすキャンドルとステンドグラス。

そして十字架の影が、沈黙する彼女たちの雰囲気をいっそ暗く感じさせた。

やがてラミアが何かを思い出したかのように、背を向けた。

「私は、救世主というのはエターナルアイドルが暴走した結果発生した次元震が原因で漂流したものだと推測します。
 ちなみに現在報告されているのは、ケフィラス邸です。それはあなた方も周知の上ですよね。
 ですが、個人まで特定は出来ていないでしょう。
 ・・・ヒントを与えましょうか。ヒントは――”メイヴ”です」

すると彼女は教会の扉を閉めた。

それと同時に煙がどっと舞った。



あとがき

あはは、シャクシャイン&カーマインがここでも登場してますね。

しかしシャクシャインの口の利き方が全然違いますし、カーマインもなんか雰囲気違いますよね少し。

理由はちゃんとありますので、あしからず。

妄想全開――のはずが結構書くのが大変だったよ。
スポンサーサイト

*Comment

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

*Trackback

トラックバックURL
http://tinatuinoue.blog37.fc2.com/tb.php/310-d8913007

左サイドMenu

プロフィール

ヒカリさん

Author:ヒカリさん
ヒカリさんです。
苦手なものはかぼちゃ、うめぼし、骨の多い魚他もろもろ・・・。
ワードとエクセル、ブラインドタッチが得意です。
http://pr.fc2.com/hikarisan/
プロフこちら↑

高校一年生演劇部所属。
中学の時は吹奏楽部で、楽器はクラリネット(B♭)&バスクラリネット(B♭プラ菅)

マブラヴTEのクリスカマジイケメンwww
イーニァが可愛すぎww
タケミーはさらっと角なしが好き。角ありだと赤。
真耶か真那と言われたら真耶派。

~所有ゲーム~

DS
・わたしのリラックマ (積みゲー)
・シムシティDS2 (進行中?)
・おいでよ どうぶつの森 (進行中?)
・ポケットモンスターダイアモンド (殿堂入り完了)
・スーパーロボット大戦W(VSゲイツ戦フルメタルートまで)
・大合奏バンドブラザーズ (マスター攻略中)
・ポケモンレンジャーバトナージ (積みゲー)

PSP
・PATAPON!2 (積みゲー)
・初音ミク Project DIVA (ハード攻略中)
・初音ミク project DIVA2nd
・魔法少女リリカルなのはA's (クリア済み)
・魔法少女リリカルなのはA’sGod(クリア済み)
・モンスターハンターポータブル2ndG(積み)
・最後の約束の物語(セレス√攻略中)

GBA
・ポケットモンスタールビー (クリア済み)
・ポケットモンスターサファイア (クリア済み)
・ポケットモンスターエメラルド (クリア済み)
・ポケモンダンジョン 赤の救助隊 (積みゲー)

PC
メイプルストーリー (進行中)

好きな言葉はSylphid(シルフィード)、Sylph(シルフ)、Maeve(メイヴ)ASTRAY(アストレイ)

ついったー

最近の記事

最近のトラックバック

カレンダー

05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -

リラックマ

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

メイプルウォッチ

スカイガールズ

ブロとも申請フォーム

ブログ内検索

バロメーター

QRコード

QR

当サイトについて

当サイトはヒカリさんが運営するサイトです。 本来は日記としてこのブログをつけていましたが、現在はクロスオーバーSSもあり。 コメントの嵐は迷うことなく消去させていただきます。 成りすましコメントや、スパムといったものも消去対象となりますのでご了承ください。 SSは作者や製作会社には一切関係ありません。

現在閲覧者数

同じくバグから復活させました、以前のバグは・・・?

現在の閲覧者数:

来訪者数

復活しました。以前のバグは何だったのだろう・・・

右サイドメニュー

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。