*+ASTRAY+*

食べることとか大好き高校生のブログ。ツイッターのせいで変更滞り気味。SSあります。

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機動戦士ガンダムSEED palatine 15「次元融解」

「さむい・・・」

少女はは天を見上げ、そう呟いた。

手にした刀には”舞蹴壱拾弐号”(まいけるじゅうにごう)と書かれている。

「大丈夫、神楽?」

「うん、大丈夫だけど・・・ここってこんなに寒かったっけ、黄泉」

「そうね、確かに、何時もより寒いかも・・・」

隣にいる少女の刀には”獅子王”と書かれており、舞蹴壱拾弐号より年季の入ったものに見え、装飾も質素ながらも綺麗だ。

風が強い。

風に揺れる木々ががさがさと音を立てる。

少女たちは耳を澄まして刀の柄に手をかけ、いつでも斬りだせるような体勢にする。

身を低くして、獲物に飛びかかろうとする動物のように微動だせずに獲物を待つ。

瞬間。

風がさらに強く、吹いた。

少女たちの刀は振り上げられていた。

眼の前には、黒い何か。

それが消滅していく。

「コレで全部、かな・・・」

「たぶん、ね」

2人はゆっくりと刀を下ろす。

途端に、安っぽい電子音が鳴り響いた。

少女は獅子王を地面に突き刺して、ポケットから携帯を取り出す。

「もしもし」

『こちら壬生屋です。そちらは終わりましたか』

「ええ、そっちは?壬生屋さん」

黄金色の夕日が綺麗だ。

電話を片手に諌山黄泉は目を細める。

『こちらも粗方終わりました。
 速水さんたちから連絡は?』

「全然ないわ。終わってないのかしら」

『そうですか。とりあえず此方は対策室に戻ります』

「ええ、じゃあ、こっちも帰るわ」

電話を切る。

速水達は何をやっているのだろうと訝しく思いながら黄泉は携帯をポケットにしまい、地面に突き刺したままの獅子王を引き抜く。

「それじゃ帰ろ、神楽」

「うん」

鞘に舞蹴を収めながら土宮神楽は返事を返した。



「黒い月がなくなった?」

藤原優香中尉は化粧室の一角を陣とって、空間モニタに映る少女に聞き返した。

この世界では空間モニタというのはそう珍しくもないものだ。

だが、彼女は個室にこもって空間モニタを使用する。

なぜかといえば、簡単だ。

通信内容を知られたくないのだ。

それもそのはず、彼女は”ミスリル”の傭兵だから。

通信の相手は、自身の固有戦力”スペツナズ”の1人、ストリンジェンドだ。

モニタに映るストリンジェンドは黙って頷いた。

「そして、それと同時に第24管理外世界、第35管理外世界に大きな歪みを観測した。
 まだ詳細はつかめていない。たぶん、私たちが出ることになると思うけど」

「歪みだって?
 世界が混ざったとでも?」

「まさか、と言いたいところですけど」

優香が首をかしげるとストリンジェンドは眉を顰めてそう返した。

「・・・そう、こっちは当分帰れなそう。ごめんね。
 で、シンはどうする事になったの?特殊戦は?」

「シンの捜索とこの間の漂流者たちの世界を探す、以外にもレナードの言うソフィアの真相とか、そんなのを探してるよ」

特殊戦はすでに動いているらしい。

優香はゆっくりと頷いた。

モニタに映るストリンジェンドも黙って上下に首を振った。

「じゃ、また」

「了解、主様」

短い挨拶を終え、モニタはブラックアウトした。

優香はそれを消して、トイレットペーパーをトイレに流した。

そして個室を出る。

「どうだった?」

白嵐がいて、ゆっくりと彼女はそう言った。

「特殊戦は動いてるって。
 あとは、また厄介ごと」

「そっか」

何処か悲しそうに俯く妖精を無意識に撫でてやる優香。

白嵐ははっと顔を赤らめて優香を見上げていた。



「いいな、霊獣」

神楽はそう呟いた。

「なんで?」

「だって、霊獣がいたらもっと強くなれて、黄泉の事を・・・」

気付けば黄泉は手に持った、竹刀袋に入った愛刀を撫でていた。

今は、乱紅蓮はおとなしくしている。

神楽が欲しいと願う力、”霊獣”は、今は静かにその愛刀に封じ込められている。

「・・・」

黄泉は電車の外を見やる。

窓に映る自分は目を伏せて、悲しそうだった。

神楽は土宮家をいずれ継ぐことになる。

それは最強の霊獣、”喰霊”の一種である白叡と魂を繋げる事。

危険な道へ進む事になる。

今の自分より、私たちよりも、危険な存在になるのだ。

神楽には死んで欲しくない、生きて欲しい。

この子を守るために私は力を振るう。

守れるのなら何だってする。

だから、・・・。

車内に駅員のアナウンスがなった。

それは自分たちが降りる駅が近づいている事を知らせる内容だった。

竹刀袋に入っている獅子王をきつく握り締め、扉を睨む。

もう一度駅員のアナウンスが鳴り、ブザーと共に扉が開いた。

2人は無言でホームに降り立つ。

行き交う人々の間を縫うように歩き、駅を出る。

自分たちの目的地、環境省機密機関超自然対策室はここから歩いてすぐのところにある。

黄泉は神楽を促してそこへ向かうべく脚を勧める。

「お、おかえりー」

超自然対策室が入っているビルの前に来ると、赤毛の少女が手を振っていた。

「あ、祭」

「おー、覚えとってくれたんか、もう私うれしいわー」

そう言って笑う赤毛の少女も同じ対策室のエージェント、加藤祭。

熊本出身で、元々は地元で退魔師として働いていたそうだ。

「そっちももう終わり?」

「そ、原先輩も人使いがあらいでーほんま」

神楽と祭りが笑う。

黄泉もつられて笑った。

黄金色に照らされた彼女たちの顔はまぶしかった。

祭に促されて対策室の部屋前まで上がる。

ノックもなしに入っていく祭。

神楽と黄泉もソレに続く。

「おかえりなさい」

部屋に入るなり、車椅子の美女が微笑んでそう言ってきた。

「「「ただいま」」」

3人は明るく言って、再び笑った。

室内は書類でびっしりと机の上が埋まっている。

そしてそれを処理する3人のエージェント。

ナブー兄弟と岩端浩司だ。

「岩端さん、ナブー、ただいま」

挨拶を交わしながら室内に入っていく。

基本的に対策室の皆は仲がいい。

だから敬語なんていうものは殆ど使わないものが多い。

だが、どんなに呑気な人間でもこの人にだけは敬語を使っている。

端っこのデスクについているその人、善行忠孝にだけは。

「ただいま戻りました、善行さん」

自然と黄泉の表情は硬くなっていた。

流石の神楽も軽く頭を下げただけで、口を開こうとはしない。

「ただいまや、善行”司令”♪」

祭だけが陽気に声を上げていた。

彼女たちにいる善行忠孝は、知的で優しい印象を与える印象の持ち主である。

知的な雰囲気と、そして強い覚悟を持つ男だ。

ソレと同時に、知的な雰囲気と鋭利な瞳に見え隠れする暗い影。

裏社会を長い間生きてきた者なら、彼は只ならぬ者だと雰囲気で分かる。

黄泉も神楽も、善行や速水といった裏社会で生きている人間から見たらまだ表だと言われる程度だが、一応裏社会の住人である。

そんな彼女たちにもその雰囲気が伝わってくる。

とにかく、裏が怖いと思わせる男だ。

「おかえりなさい、諌山さん、土宮さん、加藤さん」

そう言うと善行は微笑んだ。

「あれ、原先輩は?帰ってきたんちゃうか?」

「原さんはマイケル小原さんと、奥で何か議論してますよ」

彼の言うとおり、耳に時々入ってくる二人の声。

技術者と職人で、気が合うのかな、などと黄泉が思っていると、携帯がなった。

善行は黙って頷いてソレに出るように促す。

「もしもし」

『こちら芝村だ』

電話に出ると爆音が耳に飛び込んできて、黄泉は受話器を少しだけ耳から放す。

爆音の後に耳に入ったのは、野太い少女の声。

耳を澄ますと、気の弱そうな少年の声も聞こえる。

「どうしたの?舞」

『厚志がヘマをしただけだっ!』

芝村舞の怒鳴り声に顔をしかめつつ、「それで?」と続きを促す。

『民間人がいっぱいだ!処理しきれん、援軍を頼めるか?』

眼を善行に向ける。

すると善行は顎で車椅子の美女をさした。

そちらに眼をやると車椅子の美女こと、超自然対策室室長である神宮寺菖蒲が笑みを消して頷いた。

「・・・わかった、今行くわ。場所は?」



特殊戦13番機、パーソナルネーム、レイフは時空の狭間をさまよっていた。

薄暗い空間の中を、切り裂くように飛ぶ白い無人機。

その白い機体はがちがちに緊張していた。

これが、初めての狭間偵察の単独出撃だからだ。

普段は有人機が付いてくれていたが、今回は有人はいない。

頼りになるのは自分だけ。

いや、司令部とコンタクトを取れば、グセフ少尉やピボット大尉と話が出来る。

だが緊急時で無い今、取る事は出来ない。

「あうぅ・・・」

どこからかジャムの大群が出てきて、自分を狂わせてしまうのではなかろうかと、レイフは思う。

身体が震える。身体がガチガチと震える。

怖いよ、速く帰りたいよ、暗いよ・・・。

震えながらもセンサから得られる情報を監視する。

本日のミッションは、シン・アスカとアズリエルの捜索だった。

もしあのアズリエルとか言うデバイスに会ったらどうしよう。

私が壊されるよぉ・・・ふぇええん!

機械なので涙は出ないのだが、レイフは泣き出した。

生身の身体、つまりデバイスモードなら、彼女は滝のような涙を流した事だろう。

<機械にも愛を~~!>

何処からか幼い声が聞こえた。

幼い声だったが、マシンボイスだと瞬時にレイフは判断。

大変だ・・・アズリエルかな。

レイフは先ほど以上に身体を緊張させた。

『ほれ、天然オイル』

<おお、バトーさんっ!ありがとー!>

渋い声に答える幼い声。

誰だろう。

レイフは慎重にその声がする世界を捜索。

あった、未確認世界だ。

レイフの身体はさらにガチガチに固まった。



「・・・」

場には思い雰囲気が立ち込めていた。

フラッグ情報管理係第一小隊のパイロット、紫藤綾音がスパイ容疑をかけられて、独房に連れて行かれたのだ。

「・・・」

なのはは沈黙を保ちつつ、眉を顰めていた。

一体なんだ、あの衛兵。

彼女が一体何をしたというのだ。

思い当たる節は、自分が知る限り、ない。

特殊戦気質な彼女が、お金とかそんな理由でスパイ行為などするはずが無い。

正当防衛と言い張って発砲などはよくある話だが、あの性格に限って、人の為にそんなことをするとは思えない。

なのはは眉を顰めたまま、結局考える事をやめた。

今の自分たちは下っ端だ。教えろと言っても教えてくれないだろうから。

『なのは、これって、もしかしたら』

優香がチャントでそう言ってきた。

『次元の歪みかもしれない』

なのはは手に持った書類を思わず取り落としそうになった。

次元の歪みだって?

次元震はこの間の一件以来、観測されていないはずだ。

『どういうこと?藤原中尉』

アルテアが書類から顔を上げて優香を見やる。

『次元震はおきていないのに歪みが生じている、というのは既におきてるわ。
 ”黒い月”が消えたのよ。ソレと同時に2つの世界が歪んでいる。
 もしかしたら、この世界も同じ現象がおきているのかも』

「「え」」

アルテアとなのははぎくりと優香を凝視した。

優香は何事も無かったかのように肩をすくめて見せた。

次元震などの災害が起きていないのに”歪む”ことはないはずだ。

どこからかその世界だけ他世界の干渉を受けたのか?

『黒い月は消えてると現地の査察官は言うのよ。
 なのに、幻獣は消滅していないと』

数十年前、ミッドチルダのすぐ傍の世界である第3管理世界に、黒い月が出現した。

”闇の書の闇”にも似たその輝きを放つその月が現れると同時に、”幻獣”と呼ばれる未知の生命体が地球に現れた。

どこからともなく、宇宙から降りてくるとか、地中から湧くとか、そんな事も無く。

ただ、知らないうちにいた、と言う感じに、それは突然現れた。

幻獣はすぐに人類の猛威となり、瞬く間に世界中に広まった。

人類は皆、”黒い月と共に現れたのだから、黒い月が消えれば幻獣も消滅する”と考えていた。

その世界の人類には、経済的余裕も無く、ただ黙って必要最低限の生活できる場所を守って、人類滅亡を待っているような、絶望的な状況だったから、そう妄信するしかなかった。

そうじゃないと、幻獣と戦えなかった。

だが、その”希望的観測”は見事に的を外れた。

それと同時に、最悪な事が起きた。”世界が混ざり合う”という事が。

『多分、本来の展開と違うんでしょうね。独房に連れて行かれたのも、理由が違うでしょうね、本来の展開だと。
 だけど、違う。・・・自分でも何が言いたいのかよく分からないけど、とにかく”オリジナルと展開が違う”ってこと』

ミスリル組は黙って頭を回転させた。

『アズリエルの暴走と関係があるんじゃないかな』

雪風が躊躇いがちに言ってきた。

すると、なのは達はともかく、零までもが顔をしかめた。



「まったく、だからぽややんは・・・」

黄泉は溜息混じりに呟いた。

「うわぁ・・・凄い」

神楽は愛刀片手に周りを見回して、感心した。

ソレは何故か――。

答えは簡単。ビル数棟が見事に倒れていたからだ。

芝村舞の尽力もあって死亡者はいないそうだが――。

「損害が酷すぎる。
 火車相手にこんなになるとは流石に思わなかった」

舞がこねかみに青筋を立てて低く唸った。

その傍らで、ぽややんこと速水厚志が苦笑いを浮かべていた。

「そうやなぁ・・・っと、報告どーり死亡者無しや」

祭が瓦礫から飛び降りてきて、言った。

「良くやるわね・・・ぽややん」

厚志は、いかにも機嫌が悪そうな舞の隣で苦笑いを浮かべ続けた。

足元には化け猫の”ブータニアス”がいる。

「ほれ、ブータ、さっさともどってきい」

「にゃご」

祭の呼びかけに答えてブータニアスは速水から離れた。

太った猫はすりすりと祭の足元に自分の身体を擦って歩いた。

さらに他の”化け猫”たちが祭の周りに集まっている。

「ようやく仕事終わったんに・・・どしたんや?」

黄泉の呆れ顔、神楽の感心、舞の仏頂面、速水の苦笑いを見て、祭は首をかしげた。

終わったのなら速く帰って遊ぼう、そういわんばかりの顔だ。

「ああ、いや、後処理の事を考えたらちょっと頭痛が・・・あはは」

黄泉が苦笑いをこぼすと、祭は不服そうに顔をしかめた。

「にしても、・・・派手にやりすぎやないか?」

「「「うん」」」

祭の呟きに速見以外の3人が頷いた。



「ちょっとちょっとぉっ!」

廊下を走りながらアルテアは叫んだ。

特に意味はない。

「ったく、いったい何よ・・・っ、この世界は」

1人呟く。

前を走る零や優香は余裕の表情を浮かべて走っているが、後ろを走るなのはとアルテアは正直きつかった。

まったく、出撃後に走らされるとは。

相馬透。私たちのことをもう少し考えてほしい。

アルテアはそう思いながら必死に零たちを追った。

隊舎を出る。先頭、跳躍。

彼女たちも続いて跳躍。

ビルの上を高速で走る。この世界の人間には到底出来ない芸当であった。

前の4人はさておいて、普通は魔力強化無しでこのような荒業は無理だろう。

実を言うと、普通に空を飛ぶよりこうしてビルとビルを縫って走るほうが難しい。

なぜならビルの屋上はたいてい狭く、物が乱雑していて着地・跳躍をするポイントの見極めが出来ないのだ。

ゆっくりやるならまだしも、今は作戦行動で、速く走っている。

集中力が切れたらビルの下まで落下コースであった。

頬を流れる風が、身体に纏った魔力を少しずつそぎ取っていく。

冷たいはずの風が熱く感じられる。

そして、空気が排ガス臭い。が、息は出来る。

前を走る優香が空気を、吸える状態まで一瞬で浄化しているためだ。

彼女がいなかったら、窒息死であろう。

いくつものビルを越えたあたりで、零たちは止まった。

丁度そこは見晴らしのよい、周辺の中では背の高いビルのうえだった。

「で、どこ?」

優香が眼を細める。

誘拐された相馬透を追ってここまでやってきたものの、詳細な位置は不明だったため、走査しているのだろう。

「・・・」

零の左目が少しだけ赤み帯びた。

アルテアとなのはも、ブレインチップの拡大ツールを使って周辺を見渡した。

何時もと変わらない町並み。

こうして慌てているのは自分たちだけだろう。

『・・・観測。
 第47世界介入。ミスリル陸戦”SRT”出動』

白嵐が短くそう報告。

『また?』

『観測。・・・いや、違う。
 レイフより緊急通信。”第785世界が次元越えテレパス”とのこと』

「次元越え?・・・それって、かなりランクが高いね。船とかの補助は無しでしょ?」

「うん、でも、詳しくはレイフが帰ってきてからじゃないと」

優香が眉を顰めると、白嵐もまた顔をしかめた。

「・・・紫藤綾音はあの後、本当に独房へ?」

すると、唐突に零がそう口を開いた。

しかも珍しく他人のことを気にしていた。

「ちょっとまって。確認する」

雪風がそう答え、視線を宙に泳がせた。

セカンドブレインチップを持つ者特有の仕草である。

ちなみに第一小隊隊員には無断で小隊員全員に、GPS機能を持ったプログラムをブレインチップに混入し、零となのはのサーチャーで監視・尾行している。

「・・・っ!?」

雪風の眉が少しだけ吊りあがった。

優香はそれを見逃さず、先を言うように無言で促した。

「・・・いない。GPS反応なし。同じくサーチャーの尾行も気づかれてすでに撒かれてる」

「「フムン」」

零と優香はほぼ同じタイミングで唸り、考えに没頭する。

なのははサーチャーの誘導を自動から手動に切り替え、綾音の姿を探すことに全力を掲げる。

雪風と白嵐は上空に待機しているM9から送られる全センサの処理・監視を担当した。

「・・・零と優香と白嵐は綾音を探して。
 私となのはで透を追うわ。雪風は隊舎に戻って戦力を根こそぎ集めて!」

「「「「「了解」」」」」

ぴしりと返事を返して各自持ち場へ散る。

零、優香、白嵐はフラッグ本部へ、アルテアとなのはは件のタクシーを追って、走り出す。

飛行許可は下りていないので空は飛ばない。

排ガス臭い空気が彼らの鼻腔をくすぐった。



「つまり、戦闘を終えて離脱したら、知らぬ場所だった、と」

「はい、大尉殿」

門倉甲中尉と霧島レイン少尉に”観察兼任保護官”という任務の性質上、ミスリル作戦部トゥアハー・デ・ダナン戦隊所属フィン・キルヒアイス大尉は面会していた。

もともと<デ・ダナン>戦隊SRT所属の彼女は戦闘やサバイバル技術等には非常に強い。

だがこうしたものはニガテであった。

なぜなら本来、このような仕事はギャビン・ハンター率いる情報部によって行われるはずだったからだ。

でも何故か、今回は戦闘メインの作戦部にこのお鉢が回ってきた。

とりあえずフィンはこうした上層部の命令の意図を詮索することはせず、言われたとおり観察兼任保護官の仕事をすることにした。

「う~ん・・・あんたたちなんかやったんじゃないの?」

フィンは溜息交じりで呟いた。

「いえ、私たちは何も。・・・その、”敵組織”のプラントを破壊しようとしただけです。もっとも、そのプラントは私たちが破壊するまでも無く自爆しましたが」

「そして、門倉中尉が無理矢理データ抜こうとしてチップを壊した、と?」

「そういうことです」

レインがフィンの言葉を肯定した。

ミスリルに来る前から個人的に親しかったらしい優香や作戦部アースラ戦隊所属レイフォン・ヴォルフシュテイン・アルセイフ少尉に話を聞くと、彼女たちは”ドレクスラー機関”と呼ばれる組織を追っており、電脳世界での戦闘を請け負う傭兵だというらしい。

ちなみに彼女らは”次元世界”やこの基地は実は空に浮いているという事実はしらない。

「ふむん・・・まぁ、今日はコレくらいでいいか。私、この間の演習報告まだ書いてないし」

「「・・・?」」

フィンは軽く背伸びする。

首を傾げるレインと甲をちらりと見やりながらフィンは立ち上がる。

「今日は終わり。部屋に戻って。トイレと食堂とシャワー室H以外は行っちゃだめよ、じゃ」

早口にそう言うとフィンは部屋を出る。

レインがなにやら抗議する声が聞こえるが、無視しておく。

しかし急がねば。

急いで演習報告を作らないと・・・フィンはちらりと懐中時計を見やる。

締め切りまであと1時間。

「ああもう・・・」

クルーゾー大尉を怒らせたらどうなるか分かったものではない。

まったく・・・<パルホーロン>時代より酷いわね。

彼女は溜息混じりにエレベータホールへ入る。

ボタンを押して、天井を見やる。

快晴だった。

「・・・今日が出撃だったら良かったのに」

そう思わずにいられないほど、天気が良かった。

耳に聞きなれた、こんなハイテク基地に似合わないレトロな子気味のいい音が入る。

黙ってエレベータに入り、上昇のボタンを押す。

エレベータが上昇を始めた。

<マスター、ウルズ1より通信>

その折、そうデバイスが報告してきた。

インテリジェントデバイス”バク”。

ソレが彼女の使うデバイスの名だった。

「はぁ・・・、繋いで」

<イエス・マスター>

少しの間をおいて空間モニタが開かれる。

『聞こえるか、フィン』

「もちろん、クルーゾー大尉?」

嫌味たっぷりにフィンはそう口にした。

『・・・なんだ、その口ぶりは』

「気にしない気にしない、小さい事気にする男は嫌われるわよ」

『ふん』

モニタに映るベルファンガン・クルーゾー大尉は鼻を鳴らす。

特に不機嫌というわけでもなく、ごくごく普通の態度であった。

「で、何の用?まさか私と雑談しにかけてきたわけじゃないわよね?」

『その通りだ、さっさとゲートまで来い』

「はぁっ!?何よ、いきなり」

『仕事だ。演習報告書の締め切りは延ばしてやる』

モニタの奥に映るクルーゾーがいやらしい笑みを見せる。

「それは別に構わんのだけど・・・、仕事って内容は?
 ゲート集合ってことは作戦前ブリーフィングは無いんでしょう?ってことは緊急じゃない。
 なのに、基地のアラートがならないっておかしくない?」

『その通り。
 では今回の作戦内容を伝達する。――エレベータはそのままゲートの階まで降下させておけ。幸いそれはゲート直行だろ?』

「ええ、そのとーり」

溜息交じりのフィンは答えた。

『今回は次元震、いや、”融解”の調査だ』

「融解だって?」

なんだ、融解とは。

次元震はともかく、融解とは一体何を示しているのだろうか。

『ああ、テスタロッサ大佐・・・ではなく機関長によると、次元の中の世界がある現象を堺に溶け合って1つの世界になる事だそうだ。
 たとえれば、ウィスパードと同じだということだ』

「んっと、紅茶とミルクは混ぜたら元には戻らないってこと?」

『その通り。場所は深井大尉たちが絶賛捜索中の管理外106世界だ。
 彼らが何かを掴んだようだが、とにかく現地にて雪風と合流、その後は彼女らの指揮下に入る。デバイスの利用許可は下りている、わかったか?』

「あら、了解。106にいくのは私とベンと・・・誰?」

『ウェーバー、相良だ。マオやヤンは別世界の融解を調べに行っている。
 SRTフル稼働だ、何時振りかな、こんなに忙しいのは』

何処か遠くを見つめるように眼を細めるクルーゾー大尉。

遥かかなたを見るようなその瞳は、最期が迫った老人のような目だった。

”ああ、自分の死は近いのだな”、その眼はそう語っているようにフィンは思った。

「さあね、まぁいいけど。
 とにかくわかったわ、今行く」

『待っている』

通信途絶。

フィンはバクにウィンドウを閉じるよう指示。

同時に彼女の頭は戦闘モードに切り替わった。



彼は何かを掴んだのだろうか。

そして、紫藤綾音も。

その”何か”を知ったためにそれぞれ独房に入れられ、誘拐された。

アルテアの速度が自然と速くなる。

同時になのはとの距離も開いてしまう。

全く逆のタイプの魔導師であるためだ。

優香はいないので、速度は先程より遅いが、それでも道を走る車を簡単に追い抜くことが出来た。

件のタクシーが交差点を右に曲がる。

減速するのももどかしく、そのまま突っ込んで給水塔や物置をなぎ倒してドリフト。

魔力強化しておいたパンプスが甲高い悲鳴を上げて火花を撒き散らし、煙を舞わせた。

すぐさま体勢を整え、タクシーを追うべくビルを飛んだ。


「~~~~~~ッ!?」

どれくらい経ったかは知らないが、彼女たちは立ち止まった。

タクシーが入っていく巨大な建造物。

「VSS・・・っ!?」

なのはが驚きに眼を見開いた。

VSS、正式名称はバーチャル・スフィア・セキュリティ。

この世界では非常に有名なネット警備会社であり、同時にフラッグとなにか暗い関係を持つと思われる。

VSSの調査も今回の任務に含まれているわけだが、まさかここまでストレートにいくとは思わなかった、とアルテアは隠れて溜息をついた。

いや、テロなどの可能性も否定できない。

あのタクシーは実はVSSが頼んだものでないとしたら?

だがその可能性は低い。

なぜならあのタクシーに同乗しているVSS社制服を着た黒髪少女は、少し前の合同演習でVSS社長橘玲佳とそのスタッフたちといたらしいから。

車を降りてVSSの本社に入っていく透。

密かにまたサーチャーを投入するなのは。

ちいさな桜色の弾が本社へと入っていく。

「共有して」

「了解」

サーチャーからの映像が網膜に映されたウィンドウの脇に現れる。

それを拡大して、別のサーチャーからの映像も同時に処理した。

中は天堂宮のような無機質な壁でいっぱいだった。

鏡の様にみえる床と壁は何故か輝いていなかった。

サーチャーの視点を上げる。

すると照明が映される。

照明は点灯しているものの、あまり強い光ではないようだった。

家庭用照明より弱い光だった。

しかも、人は殆ど歩いていないようだった。

商社であるのに、何故こんなに人が廊下にいないのだろう、普通は書類を持ったOLやらサラリーマンが行き来しているだろうに。

隣を見やると、なのはが硬い表情で空間モニタを開きキーを叩いていた。

「どうしたの?なのは」

「通常制御じゃちょっと難しいんだよ、セキュリティ抜けるの」

「ほぅ?タイプ速度遅いのに頑張ってるね」

「ちょ、ちょっと、今のは酷いよアルテアちゃん」

手を止めて顔を真っ赤にしたなのはが口を尖らせる。

アルテアはそれに控えめな笑みで答える。

「でも確かに、透明化できるサーチャーでも見つかっちゃいそうな設備よね。
 というか何で思念回線まで妨害できるんだか」

「ノイ先生の話によると、強力なジャミングが仕掛けられていると思念回線まで影響が及ぶことがあるらしいよ」

「え、そうなんだぁ。でも確かにありそうな気がしなくもない。
 ウィスパードだって距離がかなり離れたり特定条件があったりすると繋がらないし」

実際はウィスパードのソレは少々異なるのだが、殆ど同じようなものだとアルテアは思った。

確か”囁かれた者”ってTAROS無しで”絶対領域”オムニ・スフィア”に接続できて、未来の人間の誰かが流す情報を入手できる数少ない人間の事だった。

ウィスパードたちは未来と現在を繋ぐ通信機のようなもので、同じウィスパード同士が近くにいれば”共振”というテレパシーに似た能力を発揮できる。

ただ共振は、オムニ・スフィアにもぐる必要があり、つまり人の精神の境界線を一時的に越える必要があり、それ故使いすぎると廃人同然になってしまう。

それこそ”混ざってしまった紅茶とミルク”になってしまう、ということだ。

そのウィスパードの能力と、念話をはじめとする魔法技術は良く似ている。

たとえば思考念話は、”簡易共振”と呼べるものである。

魔力で疑似オムニ・スフィアをつくり、それを中継地点にして会話をする、という理屈からミスリル内では言われている。

「ぁ、大変」

なのはの気の抜けるような声でアルテアは我に返った。

「どうしたの?」

アルテアがそういう前に、自動的に1つのサーチャーの映像が自動で拡大された。

どこかの研究室の内部がガラス越しに見て取れた。

その研究室の中央に置かれた巨大なコンソールに、相馬透が腰掛けていた。

彼が微動せずに座っている巨大コンソールのあちこちに廃熱装置やらジャックやらコードが接続されている。

そして、アルテアはそのサーチャーの画像の一部を拡大させた。

対面側の部屋で、腕組みして透を眺める黒髪の女性。

VSS社長、橘玲佳その人がぐにゃりと口元をゆがめて微笑んでいた。



フラッグ隊舎の中は混乱しているようだった。

第一小隊は出撃禁止、その他反抗的な部隊も同様の処置が取られている。

武装隊員があちこちにいて、電力は中央司令室に集められているため何処も真っ暗。

それが混乱の理由だろう、と零はいつも通りのさめた態度で考える。

FAFで起こった、とある大佐のクーデターの時と同じようなものだ。

もっとも、こっちの方が結構ましなのだが。

「・・・こうもストレートに行くなんてねぇ」

優香は無表情に、さして興味もなさそうに呟いた。

「フムン。今回の件で警鐘を鳴らしたのはお前だろ」

「まぁそーなんだけど、ほんとにそうだったとは思ってなくて。
 ストリンジェンドからの定例報告の時に、まさかって思ったくらいで」

3人で360度警戒しながら廊下を進む。

いつも以上に騒がしかった。

階段を下りて地価5階へ。

このあたりに来ると流石に人は少なかった。

独房の入り口まで来ると、重装備の閲兵が2人警戒しながら突っ立っていた。

今まで黙り込んでいた、白嵐はさっとエリアサーチを発動。

「閲兵はあの二人しかいないね」

「うん」

「だな」

3人の観測結果が合致する。

しかし独房なのに閲兵が二人しかいないとは。

今回の件はそれだけ強く響いているらしい。

「・・・で、どうする?閲兵はあれしかいないけど、警戒装置の類はいつもどうりでしょ?」

「うん、そうだね」

白嵐は頷くと、零と優香、両方を見比べた。

「「・・・?」」

二人で疑問符をだすと、優香を指さした。

「どっちでもいいけど、優香のほうがいいかも。
 防壁零のほうが強いし」

「おい、ちょっと待て。おれは身代わり人形か」

零が珍しくそう声を荒げた。

すると白嵐と優香は「あら意外」と声を揃えて驚きの声を上げた。

「・・・何だ」

「別に?さーて、お仕事お仕事♪」

優香は適当にはぐらかすと、一瞬のうちに閲兵二人の股間を蹴り上げていた。

そして電流をキーに流してやってセキュリティを黙らせてしまった。

「ちょっと、私の仕事とったね」

「気にせんといて」

三人は注意深く独房の中に入った。

がらんどうの檻が並ぶ。

暗い照明が不気味だった。

奥へ進んでいくと檻の中にちらほらとフラッグ隊員がちらほらといるのが確認できた。

靴音に気づいた隊員たちが三人を見上げる。

彼女らは黙って独房の通路を歩いた。

そして、――。

「久しぶりだね、君たち」

黒衣の神父が綾音を抱きかかえていた。



あとがき

ふぅ、バルフォ編はもうじき終わりですね。

そして、最後に出てきた神父は誰かというと・・・ヒントは若本です。

さてと、融解って意味が若干違いますが気にせんといてください。

では。
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プロフこちら↑

高校一年生演劇部所属。
中学の時は吹奏楽部で、楽器はクラリネット(B♭)&バスクラリネット(B♭プラ菅)

マブラヴTEのクリスカマジイケメンwww
イーニァが可愛すぎww
タケミーはさらっと角なしが好き。角ありだと赤。
真耶か真那と言われたら真耶派。

~所有ゲーム~

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・シムシティDS2 (進行中?)
・おいでよ どうぶつの森 (進行中?)
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・スーパーロボット大戦W(VSゲイツ戦フルメタルートまで)
・大合奏バンドブラザーズ (マスター攻略中)
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