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食べることとか大好き高校生のブログ。ツイッターのせいで変更滞り気味。SSあります。

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龍使いと騎士たちとおれ 01章- 始まりの章1-1 -事件は、始まっていた-

訓練初日。
といっても、昨日までは学生だったので、何をするのかよくわからん。
隣に居る須磨や蔵前、佐津間もそう思っているらしく、周りをしきりに見回しては、何かを言いたそうな顔をしている。
女子グループのほうを見回してみると、一人ぽつんと佇む時華の姿もあった。
にしても、ほかとはあいつ、交わらないのかな?
等と思っていると、此方に気づいたらしく、とことこと時華が俺たちの所にやってきた。


「おはようございます、そういや・・・、名前、聞いてませんでしたね」


可愛く照れ笑いする時華。
太陽にぎらぎらと照らされている銀髪が、むちゃくちゃまぶしい。
それどころか、白い肌まで太陽のヒカリを反射しているように思えた。


「あ、ああ・・・、坂上恵太だ、よろしくな、駒澤時華さん?」
「時華でけっこうです、坂上さん」
「じゃあ、おれも恵太で結構だ」
「では、恵太さんとお呼びします。殿方を名指しはおろか、さん付けで呼んだことなどないのですがね」


くすりと小さな笑みを浮かべて時華が言う。
それがまたたまらなく可愛いしぐさだった。
すると、こういう話が得意らしい佐津間がつかつかと此方に歩み寄ってきた。


「お、何だよ、知り合いか?そうか、ロリだったか」
「ちげーよバカ。はげろ失せろ爆ぜろ」
「あ、うぜー」

佐津間のにやけ顔に俺は怒り顔で答える。
すると、同じ様に口を曲げて佐津間が言う。
そして、そのやり取りに須磨と蔵前が笑う。
時華は、というと「あら、知り合いなんですか?」と首をかしげていた。
何度も言うがお前、可愛すぎる。決してロリが趣味なわけでもないが。


「ん、ああ、そうだな。
 ルームメイトの佐津間と須磨と蔵前」
「そう、よろしくお願いします、皆様。
 私はサポート兼龍使いの駒澤時華といいます」
「お、おう・・・、よろしくお願いします、駒沢さん。
 俺はえっと、佐津間和雄だ、龍使いだえっと・・・」


万年の笑みで自己紹介をする時華。
すると、佐津間は顔を真っ赤にしてもごもごとそう答えた。
そうか、お前も時華がタイプか。
お前もロリではないんだろうが、やっぱりこいつは別格だよな?


「こら、佐津間君、何あたふたしてんだ?
 ナンパは趣味じゃなかったのかよ」


確かに蔵前の言うとおり。
昨日の雑談会では”ナンパは趣味です”と公言してたじゃないか。


「あー、確かに、そうだが・・・やばい、本気でほれたかも」


佐津間の言葉に、爆笑の渦が巻き起こる。
お前、ロリか。
よし、お前のからかいネタができたぞ。


「あ、あの・・・恥ずかしいです」
「お?うわ、すまん、時華。こいつ、バカだから」
「お前に言われたくねーな」


いよいよじゃれあいが始まった。
周りが騒がしくなり始める。
その雰囲気が学校のようだ。
なんだ、ここも学園と変わらないのか。
おれはそう思ってしまった。
が・・・。


「貴様らッ!
 ここは遊ぶところではないッ、いつまでも学園製気分に浸るなッ!
 総員整列しろ、ファックッ!!」


華奢な体つきの女性教官がF語と一緒にそう怒鳴った。
騒がしかった雰囲気が一気にしぼむ。
全員、”こいつ誰だ”という顔で女性教官を見やった。


「聞こえなかったのか、整列しろ、整列だぁッ!
 何をもたもたしている、ファックッ、さっさと並べッ!
 それとも貴様らは整列という意味もわからない猿かぁッッ!!!」


なんか、すごいひどいこと言われてる。
おれたちはお互い顔を見合わせた。
チョーク持ってないから、安全だと判断したためだ。
ちなみに、別グループも同じように顔を見合わせていた。
すると・・・。


バアアアアアンッッ!!!!!


銃声が鳴り響いた。
これは、何の音だろう?
ドラマで聴くような音ではない。
はっとしておれたちは教官を見やった。
教官の手には、拳銃が――のちにわかったことだが、これはベレという略称で呼ばれている拳銃らしい――握られていた。
黒塗りするそれの銃口を、空に向けている。
銃口からは、硝煙のにおいと、煙が出ていた。
教官は、みんなに目線を合わせることなく、銃口をおれたち訓練生に向けた。


「ぬぁあっ!?」
「きゃあっ」


悲鳴があちこちから上がり始めた。
おれたちは、ぽかーんとその場に突っ立っている。
時華だけが、教官に向かってまっすぐな視線を送っていた。


「貴様らッ、ここは軍だッ!
 銃口を向けただけで騒ぐんじゃないッ!
 戦場へ出たら拳銃なんてちゃちな銃じゃなく、大砲ににらまれることになるんだっ!
 ファアアックッ、整列だ、整列ッ!意味がわからない猿脳は私の前に来いッ!」


再び銃声がなった。
弾は、おれの頬すれすれを通って、背後のコンクリートに当たった。
うわあ、ひやりとくるわ、とおれは身を震わせた。
一同があわてて駆け出す。俺たちもそれに合わせて整列した。


「貴様らっ、上官が指示を出したらすぐ動けっ、わかったかっ、ファックッ」


怒鳴り散らす女性教官。
野戦服の上は脱いであり、キャミソールで、はいているのはジャングルブーツ。
長い髪は後頭部で団子にまとめられている。
たっぷりと日焼けした肌に、褐色のきりっとした瞳が活発的な印象を覚えさせる。
が、褐色の瞳はどこか冷徹な光を帯びており、細身な体だが、二の腕などにきっちりと適量についた筋肉が、教官だなあなどと思わせた。
まあ、早口に言えば、体育系教師といったところか。


『はいっ』
「返事は了解だッ」
『了解』


俺たち訓練生は無駄に背筋を伸ばして半ば叫ぶように返事を返した。
すると、教官はさして興味がなさそうに左手を腰に当てた。


「よろしい。
 私は主に貴様等の訓練をすることになった曙美沙子(あけぼのみさこ)軍曹だ。
 最初に言っておく。私は貴様等を育てるつもりはない。だから本気でいくぞ、いいな」


美沙子教官はそういった。
その言葉におれたち訓練生は短く”了解”と返す。
次に、胸まで届く髪を三つ網にして右肩からたらしている制服姿の女性が現れた。


「私はあなた方のバックアップ訓練を行うことになった、藤川聖(ふじかわせい)少尉といいます。
 私は曙軍曹のように怒鳴り散らそうとは思わないので安心してください。
 ただ、言うことの聞かない生徒さんたちにはお仕置きしますよ?」


紺色の制服をぱりっと着こなした女性は、そういうとにっこりと微笑んだ。
一見すると、天使の笑みだが、どこか怖い。
それを皆感じ取ったらしく、一瞬沸いた空気が再び萎んだ。


「さて、貴様等はこれより、訓練を受けるわけだが、怖いとかめんどくさいとか思っているやつはいるか?
 いるんだったら、出て行け。訓練の邪魔になる、わかったか、今のうちにだ。
 ここから先、いやだといっても私は聞かないぞ。物事を途中で投げ出すのは嫌いだからな」


にやっと口元を歪めて美沙子教官。
すると、周りががざがざというささやきの渦が巻き起こった。
学園やそのほかの場所でもよくある”相談”である。
まったく、自分のことくらい自分で決めれないのかよ。
おれはそう思いながら、ため息をついた。
帰りたいことには帰りたい。
だが、おれはここ来てしまったからには引きたくないと思った。
まったく、優柔不断というかなんというか。
我ながらだらしない男だな。
数人が挙手する。
すると、腕を組んで美沙子教官は「ほかは居ないか」とつめたく言い放った。
水を打ったように静まりかえる一同。


「腰抜けはもう居ないな?」


ゆっくりと一同を見渡す美沙子教官。
視線が怖い。
背筋をあわてて伸ばす人や、震える人に、美沙子教官は眼を合わせる。
静かにしていろ、とその眼にこめているのだろう。
思えばうちの学園の体育教師もそういうことをやっていたっけ。


「・・・よくわかった。
 ではまず、手始めにこのトラックを4時間全速力で走ってもらおうか」




「うわ~、訓練生たちがんばってるわね」
「そうね。曙軍曹の訓練は、厳しいわ。今回は何人生き残るのかしらね」
「さあ」


私は肩をすくめて、トラックをひたすらに走る訓練生たちの黒い波を見つめた。
長袖の野戦服にジャングルブーツ、背中には大きなバックパックを背負っている。
たしかあのバックパックのなかにはC4爆薬やらライフルやらが入っているはずだ。
もっとも、私はそういうのあまり使わないからよくわからないけど。


「お、なかなかがんばってるのがいるね~」


気長な声が聞こえて、そちらに私は目を移した。
するとそこには同じ龍騎士特務隊の小西芳樹少尉の姿があった。
芳樹という名前ではあるが、一応、女子である。
だが、作法その他が全っ然女の子らしくない。
どころか男の子のような行動や言動をする。
ある意味不思議な子だったりするのだ。


「骨のあるやつじゃねーの?
 ほら見ろよ、あの鬼もあいつらをののしりもせずに追いかけてるぜ?」


鬼こと栗原綾乃軍曹の姿を探す。
あった。黒い髪を風に流してもくもくと訓練生を追いかけている。
追いかけているのは・・・昨日私が捕まえてきたやつだね。
それに銀色の子と、男子が数名。
必死になって走っている。
フォームやなにやらがすでにみんなばらばらになっているが、ほかの子と違ってすごいのは、あきらめずに走っていることかな。
ほかの子は半分あきらめているように思える。
「やってらんねー」って感じで。
だけど、先頭を走るあの子達はあきらめようとしていない。


「あれ、そういや桜蛇は?」
「知りません」


同僚のサポート、塩田安曇少尉がぼそっと呟く。
こころなしか、今日の彼女は苛立っているように思えた。
桜蛇雫同様、安曇もあまり感情を顔には出さないが、どことなく怒っているような雰囲気があるのだ。
”近づくなオーラ”みたいな感じかなあ?


「まあいいけど。
 たしかにほそーい骨はありそうね」


私はそういって鼻で笑った。
スタートラインに進むために、彼は必死になってる。
何のために?私が知る中では、がんばる必要はないと思う。
昨日はなしたクラリネット云々のためか?
それも違う気がしてならない。何でだろう。
なんでがんばる必要のないことに、全力をそそいでいるのだろうか。


「そうね。
 ぜひとも彼らにはがんばって貰いたいわ。いいかげんからだが壊れそうだし」
「だね。
 がんばれ~!鬼が後ろに迫ってるよぉ~」


身を乗り出して芳樹が叫ぶ。
手をばたばたと振り回して、挙句の果てにはどこから持ち出したのかでかいフラッグを振り回している。
さながら応援団長といったところか。
聞こえたのか聞こえていないのか、鬼こと栗原綾乃がきっとこちらを睨みつけてきた。
だが、視線をすぐに先頭集団へ戻した。
先頭集団に居る坂上恵太を私は見つめながら、ふっとため息をついた。
あいつ、なんであんなにがんばってるんだろう、と。



「つかれた・・・」
「だいじょうぶですか?」


時華がスポーツドリンクが入ったボトルを差し出してくる。
おれはお礼を言ってからそのボトルを受け取る。
冷たい水滴がたれる。きもちいい。
今の時代、ボトルには品質管理兼温度管理のナノマシンが入っているから、驚くくらいに冷たいんだよな。
まあ、当たり前だけど。
夏で余計に暑いこの場所では、そのナノマシンのせいがあってか、ボトルに水滴がびっしりとついている。
おれはそのドリンクをすする。
冷たい。少し甘く、塩辛いのが疲れたこの体にはちょうどいい。


「さんきゅ」
「いえ・・・隣失礼します」


時華がおれの隣に腰掛ける。
長い銀髪がおれの体に触れる。
きらきらと真珠のように輝いて、綿のように柔らかかった。
思わずその感触にどきりと来て、いかんいかんと頭を振る。
おれはロリじゃないし、彼女ができるわけもないじゃないか。


「タマたちは?」
「皆さんは先にシャワー行ったり、呼び出し下ったりしてました。
 秋葉さんたちからは何も聞いて一ません。”索敵”でもしましょうか?」
「いや、やめておけ」


そういうと、時華が微妙に睨んできたきがした。
だが、とくに睨んでいるわけでもなく、彼女は微笑んでいた。
にしても、ほんとに綺麗だなあ。
容姿が整いすぎているといっていいかもしれない。
そう思いながらおれは彼女から目線を外す。


「あの、お疲れ様です」
「お前もな」
「はい。
 そういえば、何か目標とか恵太さんはあるんですか?」


目標・・・かあ。
成り行きでここに居るわけだし、最初に挙手しても問題なかったはずだ。
なのに、何でいるんだろう。
手を抜いても問題なかったはず。
なのに、なんでがんばって先頭集団にいたのだろうか。


「ん・・・どうだろうな。時華は?」
「私は・・・この力、あまり好きではありませんでした」


てきとうにはぐらかして、時華に質問を振る。
すると、彼女はうつむいて呟くように言い、自分の銀色の髪を指でもてあそんだ。
指に絡めては離して、指に絡めては離すという動作を繰り返した。
紫色の瞳が儚げに輝いて、俺は思わずまたどきりとくる。
くそぅ、可愛すぎる・・・。


「でも、ここに来て、変わった気がします」
「ん?」


時華は微笑んだ。
まるで聖母のように。


「がんばってみようと思います。皆さんと一緒に戦場に立っても、足手纏いにならないように。
 もっと強くなって、皆さんと一緒に、いたいです。だって・・・失いたくないから」


やさしい笑みが年相応の可愛らしい笑みに変わる。
いつもこうやって笑っていればいいのに。
おれは時華を口説くつもりはないが、そうおもう。
笑っているときが、一番可愛く思える。美しく思う。
おれはしばし出会ったばかりの少女を見つめてしまった。
大人びた顔の彼女だが、やっぱり子供なんだな。
人の子なんだな。こんなにいい笑いができるなんて。
ずっと、こうやって笑っていてくれ。
そう思わずにはいられなかった。

と、そこでおれの思考は中断した。
荒々しく扉が開く音がする。


「お、タマ」


入ってきたのは、多摩瀬佐美貴という、今日知り合ったばかりの少女であった。
中学三年生で、女子ながらも野球部でトップバッターを勤めたという体育会系の女子である。
にしても、そういうやつは殴られたら痛いから苦手なんだよな。
古典的な現代っ子のおれはいたいのが嫌いなんだよ。


「ちゃーっす・・・って、駒澤”嬢様”になにやってるの?」
「あ、いや、これはだな・・・・」


多摩瀬――タマ――は、じーっとおれを睨みつける。
何かシトラスの香りがおれの鼻腔をくすぐった。
身をかがめて、おれに顔を近づけてくる。
きているのがだぼだぼのTシャツなせいか、胸の谷間が覗いた。


「なんかヘンなこと考えなかった?」
「べ、別に考えてねえよ」
「む~、女の勘って、結構あたるのよ?」


タマはむっと顔をしかめて、おれから顔を離した。
肩まで届いた短いツインテールを振り、眼にかかった前髪を振り払う。


「そうかい。だとしたら今回ははずれだな」


おれは時華から受け取ったドリンクを飲む。
時華も頷いてから懐から”ピンクローズ”なる怪しい飲み物を取り出し、ぐいと飲んだ。
ボトルから覗く桃色の怪しげな液体をみて、タマとおれは思わずうめき声をもらす。
こいつ、なんでそんなののめるんだ、と。
そもそもこんなの売ってるのか。
タマも思ったらしく、吊り上がり気味の眉をひそめた。


「・・・なんで、そんなの飲めるのかな・・・・あはは」
「それには同意だ、タマ」


時華はおれたちの言葉をスルーして、桃色の液体をすすっている。
左手をボトル底に添えているあたり、できている子だなーとか思ったりした。
が、飲んでいるものがものだけあり、非常に奇妙な光景ではあった。
にしても・・・いったいどんなものなんだ、このピンクローズなる怪しい飲み物は。
決して飲みたいと思ったわけではないのだが、いったいどんな材料を使えばこんな色になるのやら。
と、そこでまたしても扉が開いた。
秋葉美登里と紅伊静歌の2人が、笑顔を振りまきながら入ってきた。
後ろには、蔵前たちの姿がある。
みんなシャワーを浴びた後らしく、髪の毛が濡れそぼっていた。


「いい湯だった~」
「ですね~」

秋葉の言葉に佐津間が笑顔で答える。
女子が多いここは、彼にとっては天国らしい。
蔵前は、緊張した面持ちではあるものの、うれしそうではあった。
そういや、おれはシャワー忘れてたな。
入ってくるか、そう思ってベンチをたつ。


「どちらへ?」
「シャワーあびてくる。そろそろブースあいたろ」
「なら私も」


時華も同じように席を立った。
そして、ごたごたが始まった。




「・・・そう」


曙美沙子軍曹と藤川聖少尉の報告を聞いた、”日本自衛隊龍騎士特務隊”の指揮官は、静かに言った。
鮮やかなオレンジ色の髪で、長いまつげに白い肌。
軍服がこれでも言うかというほど似合っている。
つまり、一口に言うと、”美人”である。
龍騎士特務隊の前線指揮官、本田素子少佐の美貌を前に、美沙子と藤川の隣に控える私はため息をついた。
みんな美人だなあ、それに比べて私は・・・はあ。
またも私は隠れてため息をついた。


「今渡したリストが、とりあえず今のところ伸びそうな人物です」


藤川がきびきびとそう告げる。
本田少佐は電子パッドを操作する。
目線が下に向き、それがまた妖しい雰囲気を作る。
いいなあ、いいなあ・・・私も、こういう雰囲気が作ってみたい。


「・・・そう、ありがとう。
 柳田少尉、あなたが拾った子、なかなかよさそうね」
「あ、恐縮です。でも、それほどの人ではないと思いますよ、あはは」


”美人”の本田少佐の笑みに、私は苦笑いで答えた。
昨日、”バス”の中で桜蛇雫に指摘されたとおり、自分でも今回はちょっと強引過ぎたかなと思ってたから。
だから、言われてもうれしくない。というか逆に悲しくなるし、罪悪感を感じてしまう。


「・・・まあ、いいわ。
 とりあえず、絞れるだけ絞って。戦場で死なれたら困るわ」
「了解致しました、少佐」


私たちは敬礼をする。
私はたぶん、少し崩れてるかも。
だけど、美沙子教官と藤川少尉は、教本通りのぴしっとした敬礼だ。
無言で席を立ち、本田少佐も敬礼を返した。
これもまたぴしっとしてて、自分が悲しくなってくるなあ。
少佐が手を下ろすと、私たちも手を下ろして、黙って部屋を出た。

それぞれの個人スペースが設けられた共有オフィス前に来る。
来るなり、私はぶはーっと盛大に息を吐いた。
どうしても、本田少佐の前だと息が詰まってしょうがない。


「大丈夫?」
「うん・・・うわー、ああいう空気が苦手でさあ、しかも美人で・・・ああいやだいやだ」


藤川の言葉に、私は露骨にいやそうな声で答えた。
ああいう雰囲気、確かに好きだけど・・・、自分には出せないから、それで苦手なんだよね。
私はもう一回息を吐いてから、藤川たちとオフィスに入った。
書類仕事がたんまりたまっているし、藤川と美沙子はメニュー組んだりとまた仕事があるのだ。
それの手伝いもしようと思って、普段は私室でやってる作業もあまり使わないここでやることにした。
コアデバイスに入室記録をつけてもらってから部屋に入る。
その部屋は、広いが、天井は低く、パーティションで仕切られているため、わりと手狭に見えた。
部屋の置くの個室に入る。
ちなみに藤川と美沙子とは隣同士である。


「さてと、じゃ自分のさっさと終わらせちゃお」


仮想キーボード――ホログラム技術の発展で作られたものだ――を手元に出現させて、それをたたく。
感覚としては、薄いアクリル板を触っている感じだ。
グループウェアプログラムを起動させると、早速チャットルームが設置されていた。
開設者の名前は”FJ”、藤川だ。
それに入室する。
ちゃんと”みさっち”こと美沙子も入室していた。


FJ:お、きたきたー
みさっち@只今作業中:あいかわらずビリワラタ


入るなり、そう書かれてしまった。
私は名前に”苗木さん@ヒマ作業めんどくせ”と入力した。
苗木はいつも私が使うネームで、@マークから先は、飾りのようなものだ。
だってほら、2CHとかで”ななしさん@あついぜ”とか書くじゃん。


苗木さん@ヒマ作業めんどくせ:今北産業
FJ:テラオソスww
みさっち@只今作業中:まあ、その件はおいておけ
みさっち@只今作業中:いつものことだし
苗木さん@ヒマ作業めんどくせ:ですよねー
みさっち@只今作業中:少しは反省しろし
FJ:それこそ、ですよねーといいたくなる
みさっち@只今作業中:↑それはいえる
FJ:よかった、教官者が同意してくれたww
苗木さん@ヒマ作業めんどくせ:私の特技は反省しないことです
みさっち@只今作業中:嘘つけ。うそつきは嫌われるぞ
FJ:そうそう、嘘つくなし
苗木さん@ヒマ作業めんどくせ:さーせんwww
みさっち@只今作業中:ほらみろ、反省してるじゃないか
FJ:それでおk。にしても植木さんって本D苦手なのよな?
苗木さん@ヒマ作業めんどくせ;うん・・・ってか、植木ちゃうわww


控えめの笑いが、隣から聞こえてきた。
にしても、人の名前間違えるとか、サイテーだよね。
とかいいながら、私ももちろん笑う。
我ながら今のは面白かったように思えた。
左側に出しておいたキーボードをたたいて報告書を作っていく。
このマルチタスクと呼ばれる技術は藤川たちにみっちりしごかれたので、その辺は問題ない。



FJ:さーせんww
みさっち@只今作業中:でも苗木と植木って響きが似てないか?
FJ:それは言える
苗木さん@ヒマ作業めんどくせ:いやいや、違うと思いたい
みさっち@只今作業中:なんだ、思いたいって
FJ:苗木も似ているのに同感ってことじゃね?
みさっち@只今作業中:たぶんね、そろそろまじめにやらないか?
FJ:そだね
FJ:何かあったらここに書けってことで
苗木さん@ヒマ作業めんどくせ:はぁい
みさっち@只今作業中:了解



忙しなくログを追加し続けてたモニタの表示が、ぴたりとやんだ。
それは、本格的な作業に入った証だ。
さてと、こっちもやっちゃおう。
嫌な始末書や報告書をさっさと書いて手伝ってやろう。
そう思って、私はめずらしくデスクワークに手を出した。




「エルーシャ・サンダーク少尉であります」


私は目の前の上官に敬礼して、声を張り上げた。
私の所属する部隊をまとめる小隊長のサーシャ・キリエンコ中尉は、無造作に右手を上げる。
敬礼。見本のようなそれを、こともなさげにものの数秒でおろす。
確認してから、私も下ろした。


「呼んでいる、と聞きましたが」
「呼びました」


キリエンコ中尉は鈴のような澄んだ声で即答する。
彼女はものを単刀直入に言うことが多く、わりと上官たちからは嫌われている。
だが、非常に優秀なため、さながら眼の上のたんこぶ状態だ。
お偉い方は嫌うが、私たちはそんな中尉を気に入っていて、よく一緒に雑談したりする。
彼女も意外と気さくなので、それに応じてくれる。
それどころか、酒とかまで奢ってくれる。
戦場でも、何かあれば気にかけてくれるし、やさしい。
そんな彼女は、今日は機嫌が悪いようだった。


「・・・どうしましたか?」
「いえ、気にかけてくれなくても結構。
 自分のことは一番理解しているつもりですから」


どこをどう見たって、サーシャ・キリエンコ中尉は不機嫌だった。
そういえば、今日は指揮官同士の会議があったそうだが、もしかしてそれが原因?


「そうですか。
 それで、ご用件は?」
「申し訳ありません。今回、貧乏籤を引いてしまいました。
 逃げようとしたところ、リトヴャク指令命令だと言われまして」
「はあ。
 つまり、なんですか?」


私が聞き返すと、キリエンコ中尉は珍しくため息をついた。
よく見たら、その雪のようにまっしろな顔は、疲労の色が濃く出ていた。


「つまり、我々は出張することになりました。
 まだ日程や目的など、明確ではないのですが・・・」
「えっ・・・」
「場所はすでに決まっています。
 場所は、日本です」


日本。
確か今は、経済が破綻して、街のあちこちがスラムになったと聞いている。
我が祖国は、それを防ぐ目的でク二歩再び社会主義に戻した。
だから、我々は今、”ロシア人”ではなく、”ソビエト人”なのだ。
それにしても、落ちぶれた日本に、何をしに行くのだろう。


「日本に適合因果固体があり、それが暴走したそうです」
「っ!!?
 あんな危険なやつを野晴らしにしていたのですかッ!?」
「そのようです。
 日本は今でも民主主義の体裁をとっているが故だそうで」
「つまり?」
「つまり、捕まえたら、”不当逮捕”になるわけです。
 あの国はこんなご時世でも、平和ボケしているので、警察を動かしたがるんですよ」


あきれたように肩をすくめて見せるキリエンコ中尉。
私も、同意するようにため息をついた。
なるほど。だから危険なやつでも”罪”を犯していなければ捕まえられない、と。
もっとも、日本が”適合因果固体”をよく知っているのか妖しいところではあるが。
もしかしたら、ほんとうに解らないのかもしれないね。
だから、”魔力”研究が進んでいる私たちに依頼をしたのかも。


「まったく・・・面倒なことこの上ない」
「同感です。まったく・・・数世代前は”先進国”だのと騒いでたくせに」
「我々に喧嘩まで売っていたそうですしね」
「ええ。確かに、あれは我々が悪いのですが・・・。
 代表をころころ変えて、”返せ”といわれても困るだけです」


困った微笑を浮かべてキリエンコ中尉が言う。
私もそれに頷いてから、再び声を上げた。


「それで、私を呼んだ理由は?」
「そうそう、話を戻してくれてありがとうございます。
 つい世間話をしてしまいました、申し訳ありません。
 貴方には、これから手伝ってもらいたくて」
「何をですか?」
「資料です。
 それと、貴方には知る必要があることでしょうから」
「・・・特別因子、のことですか」


私の声が、自然と硬くなった。
特別因子。私にとって、すごく知りたいことだったのだ。
あの殺戮と、あの光景と・・・そして、その中でただ一人泣いていた女の子のことを、忘れられるわけがない。
忘れたくても、忘れられないのだ。
そして、知りたくなった。あの事件のこと。
特別因子とは、その事件とかかわりのある単語なのだ。


「・・・わかりました」


私は、居住まいを正してそういった。
すると、キリエンコ大尉も、いくらか殊勝な声で”ありがと、一人であれを見ると・・・・つらいの”と小さく呟いた。

















ネタバレつきそのに


エルーシャ・サンダーク(少尉)
龍騎士特務隊にソ連の部隊から派遣された。
銀髪銀眼で、きつい目つきをしている。
使龍はなく、端子と愛剣”エストック”が武器。
愛用端子は自走魚雷端子。

ローレライ
騎士連合に入ってから、初めて街に出たときに出会った少女。
彼女は自分の名前を知らず、周りも知らない。
容姿が妖精のように美しいことと、いつも川の周りで歌を歌っていることからローレライと呼ばれるようになった。
膨大な魔力を秘めており、歌声で魔力を拡散し、非常に敏感なセンサになる。

駒澤刹那(駒澤・刹那・F・ホームズ57世)
名門家・ホームズの家に生まれた少女。
使龍と洋剣、弓を主に使う。
彼女が生まれたときにはすでにおじいさんが家の財産の4分の3以上つかってしまっており、現在は使用人3人に、屋敷ひとつしかない。
また、”フォン”の称号(Fはそのミドル)とホームズの名前は現在イギリス王家に剥奪されており、再び家の名を戻すため妹の時華を軍に入れた。
常に時華を監視しており、心配している。
そのためか、父の命令である”監視”を無視し、実戦配備が決まった時華を基地から逃がそうとした。
だが、美沙子教官に見つかったため、同じ部隊で過ごすこととなった(訓練は美沙子教官の特別免除されている)
恵太たちが騎士連合第6方面(イギリス)に配属されたが、彼女は騎士連合第4方面(ソ連南側)へ配属された。

駒澤時華(訓練生→少尉)(駒澤・時華・F・ハドソン)
名門家・ホームズの家に生まれた少女。
使龍と端子を使う。魔力との適合がいいため、銀髪である。
ホームズ家は当主や跡継ぎのみがホームズという家名を名乗ることができるというおきてのため、彼女はハドソン性になっている。
騎士連合第4方面(ソ連南側)に配属された。
使龍は”ヴェルデ”。

曙美沙子(軍曹)
恵太たちの恩師。
使龍やサポート適正はなく、純粋な騎士である。
使用する武器は細身の剣で、かつては”双剣(ツインソード)”と呼ばれていた。

藤川聖(少尉)(富藤冥樹空(ふどうみょうきそら))
富藤冥家に生まれた女性。
最強の使龍と呼ばれる”夜叉”を従えている(普段は自分の内に隠しているため、いないものとされていた)。
名刀”夜月菖蒲”を持っており、体術にも長けている。
富藤冥という名は軍事機密になるため、本名は隠している。




ふぅ、おわった。

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Author:ヒカリさん
ヒカリさんです。
苦手なものはかぼちゃ、うめぼし、骨の多い魚他もろもろ・・・。
ワードとエクセル、ブラインドタッチが得意です。
http://pr.fc2.com/hikarisan/
プロフこちら↑

高校一年生演劇部所属。
中学の時は吹奏楽部で、楽器はクラリネット(B♭)&バスクラリネット(B♭プラ菅)

マブラヴTEのクリスカマジイケメンwww
イーニァが可愛すぎww
タケミーはさらっと角なしが好き。角ありだと赤。
真耶か真那と言われたら真耶派。

~所有ゲーム~

DS
・わたしのリラックマ (積みゲー)
・シムシティDS2 (進行中?)
・おいでよ どうぶつの森 (進行中?)
・ポケットモンスターダイアモンド (殿堂入り完了)
・スーパーロボット大戦W(VSゲイツ戦フルメタルートまで)
・大合奏バンドブラザーズ (マスター攻略中)
・ポケモンレンジャーバトナージ (積みゲー)

PSP
・PATAPON!2 (積みゲー)
・初音ミク Project DIVA (ハード攻略中)
・初音ミク project DIVA2nd
・魔法少女リリカルなのはA's (クリア済み)
・魔法少女リリカルなのはA’sGod(クリア済み)
・モンスターハンターポータブル2ndG(積み)
・最後の約束の物語(セレス√攻略中)

GBA
・ポケットモンスタールビー (クリア済み)
・ポケットモンスターサファイア (クリア済み)
・ポケットモンスターエメラルド (クリア済み)
・ポケモンダンジョン 赤の救助隊 (積みゲー)

PC
メイプルストーリー (進行中)

好きな言葉はSylphid(シルフィード)、Sylph(シルフ)、Maeve(メイヴ)ASTRAY(アストレイ)

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