*+ASTRAY+*

食べることとか大好き高校生のブログ。ツイッターのせいで変更滞り気味。SSあります。

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リリカル・イグリプス10話

-高町なのは-


朝のまばゆい日光が降り注ぐ。
燦々と降り注ぐその日光に照らされながら、私は久しぶりにレイジングハートを握っていた。
白銀の光沢を放つ柄を持ち、私は静かに自分の瞳を開いた。


「それじゃ、いくよ」
<はい>


私は、足元に魔方陣を引いた。
桜色の円形。ミッドチルダ型の方式特有の文字が地面に描かれる。
私はいくつかサーチャーを出現させて、周囲に飛散させた。
昨日、誰かの魔力を感じた気がしたのだ。
だから、こうして調査する事にした。


<見つかりませんね>
「まだわからないよ」
<ですが・・・探査には引っかかりませんよ、きっと>
「何で?何でそんなことわかるの?」
<いえ・・・あくまで勘です。
 何故、我々が魔力を感じられたのか。それは相手にもリンカー・コアがあるからです。
 ですが、この世界にいる魔導士はマスターだけです>
「それはわかってるなの」
<だとしたら、この世界の住人ということでしょう、ここでも魔力の研究が進められている証拠だと思います。
 篁大尉たちのお話を聞く限り、そういった研究ができる国や組織といえば――>
「”国連軍”か、ソ連」
<その通り。そしてこの基地は帝国陸軍のものです。
 国連軍人たちがいるのはおかしい。見つかる前にさっさと撤収したのだと思います>
「フム・・・」


私は考えてみた。
私が知る限りこの基地に居るのは帝国陸軍と我々近衛軍だけだ。
となるとスパイの可能性もある。
だけど、その可能性もないと思う。
みんな良い人だし、何故もぐりこむ必要がある?
いや、武御雷などの技術欲しさに来るということもあるか。
武御雷は国連軍横浜基地――立場的には日本側かもしれない――や北極――国連軍基地ではあるが、仕様のテストのためだと思う――、そして近衛のみに配属されている。
高性能機でありながら、その技術を公開しない。
国連軍、ひいてはアメリカなどの国々はそれが腹立たしかったのかな。
だけど・・・プロミネンス計画のひとつ、XFJ計画で日本の3世代機”不知火弐型”の技術情報を知ることができたはず。
現行型である不知火弐型甲などとは少しだけ変更点があるものの、問題にならないレベルだ。
ならば・・・何故。
武御雷だって近衛専用機とはいえ、国連に配備されている――テストだったり、帝国将軍家の関係者だったりするものの――。


「やっぱり、狙いは私って線もあるよね」
<でしょうね。とにかくいくらサーチャーを使っても意味はないと思います>
「うん・・・あ、もうご飯の時間」


私はバリアジャケットを解除し、レイジングハートも待機状態に戻す。
確か今日は、フィジカルトレーニングだったけ?
私は小走りに食堂へと向かった。


-イーニァ・シェスチナ-


私は同じ部隊に所属するクリスカやナカジマ姉妹とともに輸送機に揺られていた。
BETAに襲撃される可能性が非常に高いため、本来は輸送船で日本本土へ渡るのが普通なのだが、千島基地のプレシア・テスタロッサ副指令は”さっさと行って来なさい、時間がないわよ”といい輸送機とその護衛部隊を用意していたのだ。
護衛部隊の機体はチェルミナートルM2が主で、そこに少数のジュラーブリグが混ざっていた。



「にしても珍しいよね、イーニァちゃんが自分でどこかに行きたいなんていうの」
「そうね」
「クリスカが自分の道を進み始めたからイーニァちゃんも真似てたりするのかな?」
「どうかなあ。まあ・・・ありそうな話だけど」


ナカジマ姉妹はそう言いながら、輸送機内でじゃれあいを続けていた。
クリスカは、輸送機の端っこで読書に勤しんでいる。
私はナカジマ姉妹の会話に混じる気にもなれず、クリスカのように何かに没頭する気が全然わかなかった。
とにかく、あの桜色のヒカリが気になって仕方がないのだ。
輸送機の外をちらりと見やる。
鉛色の空に浮かぶチェルミナートルが、航空戦装備で安定した飛行をしていた。
まだ光線級は危ないけど、この装備のおかげで滞空能力と推進剤の搭載量が増えたので機動力も増した。
この高速輸送機を守るくらいのゆとりはあるとのことだ。
ちなみにこのチェルミナートル及びジュラーブリグの航空戦装備はテスタロッサ副指令が開発したものだそうだ。
この数年間、日本機は地上戦での機動力を鍛え、米軍は集団戦向きの機体を進化させ、ソ連は空でも十分に戦える状態にしたおかげで、作戦のバリエーションが増えた。
プロミネンス計画のおかげもあってか、各国それらのだいたいの技術を持っている。
これでまた人類の生存率が少しだけ上がったらしい。
そして、桜色のヒカリの正体を突き止めれば、人類が逆転できるチャンスができる。
あのヒカリは、人類逆転の鍵だ、そして、第6計画――オルタネイティヴ6の。


「えっと、どこの基地に行くんだっけ?」
「国連軍横浜基地。そっから海鳴ってところにある基地に行くらしいけど」
「海鳴?どこだろう・・・」
「さあ。私も日本の地理には明るくないから」


私たちが向かっているのは国連軍の中で極東最大の基地といわれる横浜基地だ。
アメリカのG弾強行使用によって横浜ハイヴを破壊し、そこに基地を立てたのだ。
もともとがハイヴのあった場所、というだけでも異質なのだが、この基地はそれ以外にもいろいろとあったりする。
たとえば、オルタネイティヴ4の本拠地だった、とか。
また、G弾を使ったおかげで、横浜基地に勤務していた兵士たちのほとんどが身体障害者へとなったらしい。
ただ、短期間であれば問題ないとのこと。
確か横浜基地に配備されている戦術機は、F-4J激震と不知火が主で、ヴァルキリーズと呼ばれる部隊には不知火弐型丙が配備されていると聞いた。
不知火、かあ。
ユウヤ、元気にしているかな。

私はそう物思いにふけり始めると、意図したかのようにそれは鳴り出した。
けたましく鳴るのは警告音。
そう、聞きなれた警告音だ。
丁度エスコートの機体が日本の機体、空中攻撃機とも呼ばれる戦術機、”鷲頭”に変わり始めたころだ。
そうだ、BETAを想定した空中戦ならば最強ともいえるソ連のチェルミナートルやジュラーブリグが引き始めた頃だ。


「何っ!?」


クリスカたちがその警告音に飛び上り、それぞれそうどなり散らした。
この場にいる人員を指揮する立場にあるギンガが早足に輸送機コクピットへ向う。
そして、音量最大に設定されたらしいスピーカーから帝国軍機隊長の声が勇ましく鳴り響いた。


『こちらスカイダンス1、水無月だ。カーゴ1、援護する。くれぐれも急ぎすぎて落ちるなよ』


-プレシア・テスタロッサ-


「―――そう、――ええ、――ええ、わかっています、――ええ、お願いします」


私は電話を投げるように置いた。
移動中のイーニァたちがBETAに襲われたらしい。
私は手元の冷め切ったコーヒーを口に含ませる。
でもまあ、あの水無月の姉や田中中尉が護衛についているから、大丈夫か。
それよりやっぱり気になるのはロイヤルコーストガード。つまり、近衛の動向が一番気になる。
近衛には私の娘や第6計画のカギになる娘がいる。だけでなく、近衛に配備される予定の新型も。
基本近衛の機体はプロミネンス計画には参加していない。
まあ、日本の最高スペックを誇る機体のデータをやるわけにもいかないという事情もあるが―-やはり北九州などを失った日本は生産能力は低い。お財布の事情もある。
たとえば、日本が武御雷を売るとする。しかし能力を下げたり、各国の戦術にあわせた機体にしなければならない。そのためには開発しなければならないのだが、そのような”無駄”を作る余裕はないのだ、現在の日本には。
また、帝都の復興も終わっていない。まったく・・・悪循環もいいところね。


「失礼します」


おっと、来客だ。
眩しい金髪の女性だ。


「あら、カリム――」
「ひとつ報告が」


私の言葉をさえぎって、カリム・グラシアは早口に言葉を紡いだ。


「例の日本の新型ですが・・・ネームは星光というそうです」
「それって――」
「ええ、あなたの娘さんの部隊が実践試験を担当していますね。
 とりあえず2機が娘さんの部隊に配備されていて、片方が軽砲撃、もう片方が重砲撃機になっているそうです」


それは驚いた。
日本はとにかく近接戦闘にこだわる節があったのに、砲撃仕様機だって?


「そう」
「それで、その重砲撃機のほうはまだ実戦には出ていないそうなのですが・・・、開発衛士(テストパイロット)は誰だと思いますか?」
「?誰?」
「・・・高町なのは”軍曹”だそうです」
「ぐ、軍曹・・・・?」
「ええ、まだ少尉任官していません。めずらしいわよね、尉官じゃない衛士と言うのは。それに、近衛よ?」


カリムは素の口調になりつつ、笑った。
たしかにおかしな話ではあると私は思う。
私の娘の部隊”ライトにング”は、征夷大将軍の”手ゴマ”の一つだ。
その部隊の主役ともいえる開発衛士が下士官だなんて。寝言は寝て言いなさいよと私は言いたい。


「おかしいわね」


私のつぶやきにカリムが頷く。
しかし――こちらにとっては好都合かな。
彼女は、私の第6計画には必要な人材だから。



-高町なのは-


「えええええっ!」


いつもの合成定食をつまんでいると、急に騒がしくなった。
ちょっと、食事くらい静かにしてよ。


「それってほんとなの!?」
「海鳴基地に国連軍の、それも第6計画の関係者が来るって!」


え?国連軍?
これはビックリするなの。
日本って国連(アメリカ)をとにかく毛嫌いする節があったのに。
って、第6計画?・・・ああ、そういやいつぞやかにアルテアさんが説明してくれたような・・・。
まあ、要領得なかったけど。


「なんで?」
「いやなんか、その計画に必要な人材がいるらしいよ、うん」


ええっと・・・第6計画はとりあえず、名前と概要しか知られてないんだよね、私も概要しか知らないけど。
たしか、”能力者による奇怪現象攻撃”・・・とかなんとか。
ついに世界は現実問題から逃げました。主に役人の人達が。
・・・って、いってるように聞こえるのは気のせいだよね、うん。


「ああ、私も母さんからメール来てこれから人送るとか何とかって」
「馬鹿、それを先にいえ」
「えええ、でも唯衣姫やがるじゃん、国連の話すると」
「それはっ・・・・その・・・」


あ、珍しい。篁大尉が赤面してる。
意外とかわいいね。


「・・・高町、今変なことを考えなかったか?」


女は地獄耳・・・・。
とくに唯衣姫さんはその傾向が強いらしい。
ああ、はやてちゃんみたい。


「別に何も考えてませんでしたが・・・・国連の話は本当なんですか?」
「らしいぞ。・・・ふふふ」


あれ?
笑ってる。笑ってるよ。篁唯衣さん。
黄色くて硬いきれいな岩が笑ってる。
うわあ、意外―――ぐふっ


「上官を甘く見るな、馬鹿め」


出席簿アタック・・・もとい、お盆アタックでした。
ご指導ありがとうございます。
って、これなんてラノベなのかな。
え、ラノベは私もさりげなく読んでたりするんだよ、もちろんもとの世界で、だけど。


「唯衣っちなに笑ってんのよ」


いつのまに新たなあだ名がついていた篁大尉でした。
唯衣っち・・・意外と似合うね、赤面モード前回の大尉なら。


「なっ!?・・・あ、いや、その・・・」
「んー何々?」


雷刃が身を乗り出す。
あ、行儀悪い。


「あー、んんっん!気にするな、気にしたら負けだ、雷刃」
「うーケチンボだなあ、唯依っち」
「ケチじゃない!人が恥ずかしがっているのをまったく・・・」


唯依さん赤面してうつむくのまき。
やっぱりかわいいよ~フェイトちゃんみたい。
あ、もちろん執務官志望の人の方。
って・・・紛らわしいなあ、いろいろと。
そう思いながら私は合成ごはんをつっついた。



-イーニァ・シェスチナ-


日本の戦術機、鷲頭がその戦術機にしては小型かつ細い身体に接続された”飛行”ユニットと機体各部のスラスターを吹かした。
甲高い音が、輸送機内の警告音に負けないような音量で唸る。
瞬間、加速した。灰色の鷲頭は飛行ユニットの翼についているミサイル――ブラックマンバMk2――を発射。
すると、ぴたりと重光線級からの射撃が減る。
すると今度は海中から潜水級(ダイバー)がその威容に長い脚手を伸ばす。
鷲頭は驚くほどきれいなインメルマンターン、あるいは無理なスプリットSでそれをよけて、2方向から集中砲火を食らわせる。
ソビエトの高慢によってカムチャッカ戦線が壊滅したあと、新に出現した潜水級はその名の通り海を主戦場とする。大型種に分類される潜水級はたとえるなら水中版要撃級(グラップラー)だ。まだBETAは水中という戦場に慣れきっているわけではないので攻撃の回避は新兵でもできるはずだ。
鷲頭の隊長機――ブースターの大型化とセンサーマストの大型化が図られている――はインメルマンターンを決めた後、急降下しながらブラックマンバMk2を発射する。
潜水級は水しぶきと血しぶきをあげながら水中へと引き込まれるように沈んでいく。しかしやはり数が多すぎる。
隊長機のあとを追うように2番機マーカーをつけられた鷲頭が急降下しブラックマンバMk2を発射。
ミサイルを討ち果たした2機の鷲頭は再び上昇する。
空対海の戦いでは戦術機のメイン武装がミサイルになる。あとは大砲などだ。突撃砲などだと水中に入ったら威力が半減して使い物にならない。
つまり、今回の彼らは「爆撃」の任務を負っているのだ。「護衛」というのはある意味名ばかりなんじゃないだろうか。


「おお、日本の機体もいい動きするねえ」
「そうね・・・ほら、クリスカ、見てみないの?技師希望なんでしょ?」
「ああ・・・見物させてもらおう」


私の姉ことクリスカ・ビャーチェノワは私と同じで”オルタネイティヴ3”の生き残りだ。
昔は中央、つまりアラスカで複座型の試験をしていた。
今は実践試験操縦者ではあるが、開発衛士なのだ。
ま、名ばかりだけど。それで、私たちは最近になって人間としての生き方を模索しはじめた。
ナカジマ姉妹と出会ったのが始まりだ。遅すぎるかもしれないが、だからか、私たちは必死になって生き方をさがしている真っ最中です。
で、クリスカは機械技師、戦術機の開発者を目指しているらしい。
そのせいか、さっきまで読んでいた本も”戦術機最強機の秘密”である。
ちなみに英語で、特集の機体は”不知火弐型”。
不知火弐型はアメリカやソ連、欧州連合の中では有名な機体である。
あの美しいフォルム、それでいてあの迫力に満ちたパワーに機動性。そして、投射電磁法。
ソ連のカムチャッカ戦線の話もその本に含まれている。
はあ・・・ユウヤなにしてるのかなあ。
今ふと思った。不知火弐型といえばユウヤだよね、やっぱり。
今は国連の教導隊に所属しているらしいが、連絡の一つもない。


「にしてもこの戦術機Su-47MK(ベルークトマッハキャリバー)よりかっこいいなあ」
「私もそんな気がするんだけど」


ナカジマ姉妹がきゃんきゃんと騒ぐ。
Su-47はソビエトの新型で、姉のギンガがSu-47BK”ベルークトブリッツキャリバー”、妹のスバルがさきのせりふに出たとおり、Su-47MK”ベルークトマッハキャリバー”のテストをしている。
どちらもレーザーヤークト(光線級掃討任務の通称)をこなすこと前提に作られている。
そのため速い。ただ、まだ突撃砲などの武装が間に合っていないという現状ではあるが。
そう思いつつ、窓の外の戦闘に再び目を向けるのだった。


-高町納之覇-


一部フラップなどを脱落させながらもやってきた巨大な輸送機の貨物室で私は今、ソ連からよこされた物資の数々の点検・搬入作業の監督をしています。
戦術機が3機、うち2機が新型で1機が既存とはいえ希少(レア)な複座型です。
ただし、新型のほうはまさかの固定武装以外は開発遅れのためになし。なら通常仕様くらい持ってきてください。お金がないのでしょうけれど。
ため息を一つついて、私は目線を上にあげて運び出されるコンテナを見た。
キリル文字で書かれた錆の浮いたコンテナ。私は文字を確認する。


「120ミリ散弾砲、1ケース」


口に出して確認し、手元の古びたクリップボードに挟んだチェックシートに記入する。
私に与えられた任務は、輸送機から運び出されていく荷物の確認だからだ。


「高町准尉」


しばし経った頃、私の名前が呼ばれた。
声で誰だかわかる。大事な恩師だからだ。


「八角(ほすみ)少佐」
「やっぱり貴様だったか、よく覚えているよ」


振り返ると、豪快に笑う帝国軍の男がいた。
八角武雄大尉、いや、八角武雄少佐、か。
少佐は私の敬礼に応え、ぴっしりと記憶通りの隙のない敬礼を見せてくれた。
相変わらずのぼさぼさの髪に伸びきった髭。こんなしまりのない恰好でも一応少佐で大隊長を務める衛士だというのだから驚きである。


「お久しぶりです少佐。1年ぶりですね」
「そうだな。元気にやってるか?」


八角少佐は私の肩に手をおいて聞いてくる。
私は肩をすくめて「見てのとおりです」。


「ふん、相変わらず面白いやつだ」
「・・・お褒め頂き光栄です」
「そして相変わらずの毒だ」


そうですか、と私はペンを走らせる。
36ミリ砲弾4ケース確認。


「毒ですか」
「違うのか?」
「思ったことを口にしているだけです。悪癖だとは、自覚しています」
「だな。だから出世の機会棒に振ったんだろ」
「失礼です。私の兄と妹は近衛にいますゆえ」


私はさらにペンを走らせる。
これで終了、と。
少佐を無視して私は耳にひっかけたインカムに手を伸ばす。
少佐は何も言わず黙っている。


「こちら高町准尉です。すべて確認完了しました」
『了解した。戻ってこい』
「了解です、通信終わり」


通信を切ると、兵站部隊の上官が忙しなく声を上げながら私の元へやってきた。
八角少佐は黙って私の後ろに下がる。まるで、私の働きぶりを見ようかとでもいうような感じで。


「任務は完了しました。ご確認を」
「ああ、わかった」


私が両手で差し出した古ぼけたクリップボードをその兵站部隊の上官が受け取る。
そしてさらりと目を通し、「ご苦労だった、おかげで助かった」敬礼。
私は答礼する、後ろの少佐は階級章が見えにくいよう、私の陰にいる。


「では私はこれで」


故に、私はその場を歩き出した。
少佐があわてているのを尻目に。
しかし私は無視を決め込むことにします。
そのほうが、刺激がありますから。
私はそのまま歩き続けた。
隊舎に入ると、今時珍しい生花が活けてあった。
白い、夏芙蓉。空調に頼って生きている。
武骨なロビーに咲く夏芙蓉は不釣り合いだがとてもきれいだった。


「あ、高町准尉。お疲れ様です」
「お疲れ様です、少尉」
「綺麗でしょう、その花。なんていうか知ってる?」
「夏芙蓉、ですか」


ブーツの音を響かせて、女性が花の隣に立った。
いきなりだったので、少し驚いた。
胸には少尉の記章とウィングマーク。


「違うわ。芙蓉よ。夏芙蓉っていうのは造語なの」


女性――志野原紗知少尉は芙蓉の花をなでる。
何かを思い出すように、目をつむり、いう。


「芙蓉自体に思い入れはあまりないけど、従姉妹に芙蓉って名前の人がいたのよ」
「そうですか」


芙蓉、か。
花と同じ名前の親戚。彼女もこの芙蓉の花と同じで綺麗だったのか。
そういえば、私の兄弟はどうしているのだろう。
兄と妹はそれぞれ近衛軍に所属しているとは聞いた。
それも妹は開発衛士として新型機に搭乗していると聞く。
兄は”出来損ない”と悪名高い三色家の一人娘が仕切る部隊の副長だそうだ。
詳しいことは何も知らない。
実家に残っている姉からは時々手紙が来るが、最後に来たのは半年前だ。
親戚と聞いて、家族に思いを馳せていたら、ふと、寂しいなと思った。
だから、こう聞いた。


「仲、良かったのですか?」
「え?」
「仲が、よろしかったのかと」
「ああ、そうね、よく可愛がってくれたわ。私は毛嫌いしてたけど」


志野原少尉は歩き出した。私も続く。


「何故、毛嫌いしていたのですか?」
「そうね・・・。どうしてかな。感覚的に無理だったのよ。確かに可愛がってはくれたわ。けど」
「?」
「なんとなく、すぐに消えてしまいそうな匂いがしたの。どこか遠くへ走り去っていくような」
「走り去っていく?」
「そう。この人はすぐに手の届かない所へ行ってしまう気がしたの。だから毛嫌いして、距離を置いていたのよ」
「別れが辛いから?」


少尉は頷く。
私は父が、現当主がよく語ってくれた母の話を思い出す。
父曰く、母はとても強くて優しい女性だった。とても魅力的な。
だから近衛から出向という形で彼女に接触し、付き合い始めた。
そして付き合い始めてから気づいたという。
彼女は確かに、魅力的な人物ではあったが同時に危険な匂いがする、と。
だが現当主、高町士郎は受け入れた。それほど彼女のことが好きだった。
一般家出身の彼女との結婚を決めたとき、分家から様々な理由で反対されたが、どうにか押切り結婚。
そして兄を生んだという。しかし子育てもせずすぐに戦場へ舞い戻って行った。
日本のために、と。
数年後、再び彼女は現当主の元へ戻ってくる。新たな子を授かって。
しかも、お腹に宿したその命は高町士郎との間の子ではなかった。
彼女は語った。前線ではこういうことは珍しくないのだ、と。
私は運が良かっただけ。運が尽きたのよ、とお腹をなでながら、笑って。
姉を生んですぐ、彼女は病死したという。性病だった。
「今にして思えば」と、父は話をこう締めくくったものだ。
「別れという予感の匂いに惚れたんだな。貴様らにはまだわからぬだろうが、危険な匂い、雰囲気には独特の美があるのだよ。しかし、なぜ危険なそれに美があるのかは我にも解らん。しかしこれだけは言える。彼女は、高町艶子はそんな香が自分から出ていることを知っているから、わざわざ後方に下がって恭也と御幸を生んだのだよ」と。
語る父の背はその時だけやたら小さく見えたものだった。


「逆なのですね」
「・・・逆? 何が?」
「私の父は・・・別れが辛いからこそ、より深い関係を結びたかった、と語っていました故」
「どういう?」
「口でこそ語ってはくれませんでしたが、いつぞやか、姉からの手紙で知りました」


納之覇、愛という感情は、離れるかより近くなるか紙一重なのだそうです。
人間の愛という感情は、愛する故に近づくこともあるし、愛する故に離れてしまう事もあるのです。
昔よくいた動物よりずっと複雑だな、と私はこの考えを知って思いました。
しかしなぜ人間というのは猫や犬と同じ仕組みで動いているのに複雑なのでしょうか。
愛しているのなら、くっついてしまえばいいのに。
このご時世、近づいて一緒に歩んだほうが、ずっと幸せだと思うのです。
しかし、なぜ、離れるという選択肢まで人間にはあるのでしょうか。
納之覇は、どう思いますか?
私は、みんなとくっついて、温かく暮らしたいのです。
どうか、ご無事で。早く帰ってきてください。
父は別れが辛いが故に深い関係を結ぶ道を進みたかったそうですが、その願いはかないませんでした。
私は、そんな父の願いをかなえたいのです。
別れるのは、つらいのですから。


「そんなことを・・・」


丸暗記していたそのいつもよりずっと短い文面を口に出した。
すると、少尉は首をかしげた。


「ではヤマアラシはどうなの」
「ヤマアラシ?」
「ええ。オスとメスは冬、一緒にいないと凍えてしまう。しかし、全身を覆う針のおかげで相手を傷つけてしまう。しかし、離れれば自分どころか相手も死んでしまう。だからつかず離れずの距離を保つの」
「なるほど。ジレンマということですか」
「好きなのに、愛しているから離れることも、愛しているから一緒にくっつくこともできない。正直人間はまだましよ」


そう言って、志野原少尉は笑った。
そして、続ける。


「私も、そうだったんだもの、わかるわ」


少尉は扉を開ける。資料室だ。そういえば、彼女は資料室の主とも呼ばれるほど、この部屋に入り浸っている。
半身を部屋に入れ、彼女は足を止めた。振り返る。


「故に、たぶん私は長生きできないかもね。ヤマアラシみたいに距離を探して、失敗するから」


*


そろそろ伏線の整理とかしたいな。
設定ミスもあるのでそのうち修正します。
大変長くお待たせいたしました。
次回から分量減らします。
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ヒカリさん

Author:ヒカリさん
ヒカリさんです。
苦手なものはかぼちゃ、うめぼし、骨の多い魚他もろもろ・・・。
ワードとエクセル、ブラインドタッチが得意です。
http://pr.fc2.com/hikarisan/
プロフこちら↑

高校一年生演劇部所属。
中学の時は吹奏楽部で、楽器はクラリネット(B♭)&バスクラリネット(B♭プラ菅)

マブラヴTEのクリスカマジイケメンwww
イーニァが可愛すぎww
タケミーはさらっと角なしが好き。角ありだと赤。
真耶か真那と言われたら真耶派。

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・わたしのリラックマ (積みゲー)
・シムシティDS2 (進行中?)
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・魔法少女リリカルなのはA’sGod(クリア済み)
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